紫陽花や鉄階錆びし工場跡

二階建ての建物の外階段をトントントンと登ったところに事務所がある。階下は工場、開けっ放しのシャッターの奥から機械の音が聞こえてくる。階段の傍の植え込みには雨に濡れた紫陽花が、、、。と言った感じの町工場だったのだろう、今はシャッターも薄汚れ外階段は赤く錆び付いて、二階へ上がるのは危険そうに見える。紫陽花は植え込みからはみ出すぐらいに育って、濡れた青色がやけに綺麗だ。さて、何の工場だったのだろうか、、、?(2015年夏詠)

蜘蛛の糸引けば向うの枝動く

毎日毎日蜘蛛の巣が出来て、注意しているのに引っかかってしまう。それも朝いちばんに新聞受けまで歩く間に。蜘蛛にとっても迷惑なことで、せっかく作ったところに餌にはならない人間がかかるのだから。蜘蛛のほうも少しは考えて通れと思っているかも知れない、、、。(2015年夏詠)

切目なき手水の音の涼しさよ

涼しさを感じるものに水音があります。掲句は阿智神社の手水の水音です。いつも程よい音でちょろちょろと流れています。信心深いわけではありませんが、貼ってある手水の使い方の案内に従って、、、。(2015年夏詠)

猫が主であるじが従でところてん

近所に猫を散歩させている方がいます。ちょっと大きめのアメリカンショートヘア。歩く時はいつもご主人の前、しっぽをピンと立てて、得意顔です。ご主人は猫のなすままの猫可愛がりです(猫ですから)。ところてんは好きでもなし嫌いでもなし、出てくれば食べますが、あえてたべようとは思わないものの一つ、、、。(2015年夏詠)

雨後の抱いて起せる百合の花

うまく土地と合ったのか、一度植えた百合が何年も生えては花を咲かせてくれる。それも最初の年は丈が低く一株だったものが、今では人間の背丈ほどの集団になっている。こう雨が続くと思いのほかその成長が早く、気づけば今にも倒れそうに曲がっている。それを抱えて抱き起し、新たな紐をかけるのだが、水滴はかかるし、花粉はつきそうになるし、、、。(2015年夏詠)

洋館のフェンスは白し南瓜咲く

毎年のことですがコンポストに入れたカボチャが芽を出しました。せっかくだからそのまま植えて置いたらいつの間にか大きく育って、ついに生垣を突き抜けてしまいました。今50Cmほどでしょうか、生垣の上に覗いています。花も咲いていますが、まだ雄花ばかりです。何個か収穫できれば良いのですが、、、。掲句は散歩途中にあるお宅、、、。(2014年夏詠)

夏雲の威風堂々立上がる

梅雨空にもちょっと食傷ぎみ、そろそろこんな雲を見たいと思う。次第に白く積み上がり、頂上付近はもう白を超えた白に見える。そんな中から音もなく光りながらジェット機が滑り出してくる。なんて事になれば、もう梅雨空なんてどうでも良い。威風堂々はちょっとありきたりの言葉になった感がありますが、、、。(2015年夏詠)

蛇死して影焼き付けるアスファルト

朝の散歩に出ると、夜の間に轢死した蛇によく出会う。たぶん夜も残るアスファルトの温みを求めて路上に出ていて被害にあうのだろう。トラックのような大きなタイヤにまともに轢かれると、まるで煎餅のようになってしまう。よくしたもので、その煎餅が次にそこを通りかかる頃には、烏かトンビか、あるいは狐か、綺麗に処分してアスファルトには影だけが残っている、、、。(2015年夏詠)