柿一つ落ちて夜来の風の跡

昨年の台風一過の朝の景、どの台風だったかまでは記憶に無いが、落ちた柿が一つだったのは、風が弱かったのでは無く、生っている柿が少なかったから。何となくホッとした記憶がある。今年は台風も多く、落ちた柿も多かったが、もとから多く生っていたので残っている柿はいまだに多い。多すぎて個々の大きさが小さい。まだ食べるまで熟れていないが、きっと味はもう一つだろうと思う。大失敗、、、。(2014年秋詠)

露の玉光るソーラー発電所

去年はあちこちにソーラー発電所が出来たが、今年は少し勢いが落ちたような気がする。掲句は昨年出来たソーラー発電所、そもそもソーラーパネルが並んでいる様子は自然の景にそぐわない気がして好きではないが、この時ばかりは早朝のパネル一面が露に覆われ、しっとりとした表情を見せながら光っていた。さてそれから一年、もともと草原だった所に出来たこのソーラー発電所、周囲のフェンスは蔦に覆われ元のように目立たなくなっている、、、。(2014年秋詠)

佳き事のありて吉き日の良き月夜

一昨日日が十五夜で、昨日が満月、おまけにスーパームーンで、いつもより大きく見えると言う事でしたがどうだったでしょうか?そう思って見れば確かに大きいような気もしますが、空の真ん中に上ってしまえば周囲に比較するものがないので分かりませんでした。ヘッダーは昨日の月、掲句は昨年の月、、、。(2014年秋詠)

稲穂波ゆれて稔を深めけり

田圃の揺れる稲穂を見ていると、たぶんこうして適度な風に揺れることが稲穂の隅々まで風を通すことになり、それがよい収穫に繋がるのだろうと、素人考えですが思うのです。県北はだいぶ稲刈が進みました。今年はどうだったのでしょう?日照時間は例年より少なかったような気がしますが、これも素人考えです、、、。ヘッダーの写真は一週間前の棚田百選<大垪和の棚田(オオハガノタナダ)>です、、、。(2014年秋詠)

茶箪笥の裏を棲家のつづれさせ

田舎の実家は手斧で削った柱が使われているような古い農家だったので、虫という虫は出入り自由だった。秋の夜にはコオロギやらスイッチョやらが突然鳴きだすことは珍しくなかった。今の住いは築三十年を越えたが、さすがに昔の家とは違って建付けも良いので、そういうことの頻度は少ない。少ないが年に何回かは家の中で突然鳴きだす虫がいる。声がすれば捕まえて外に出してやるのだが、時々部屋の隅で干からびていることがあるのが哀れ、、、。(2014年秋詠)

きちきちの塀に当たりて引き返す

街中の路地、羽音に「あ、こんなところに精霊バッタが」と思う間もなく、飛んでいったバッタは行き止まりのレンガ塀にぶつかった。そして、そのまま落ちるのかと思ったら、偶然か、瞬間に向きを変えてこちらへ戻って来た。見えない訳ではないだろうに、虫はどうしてぶつかるまで飛んで行くのだろう?雨戸を何度も何度も打つコガネムシもそう、、、。(2014年秋詠)

秋時雨山湖に影を走らする

倉敷の句会へ国道429号線を通って行くと、旭川ダムのほとりをしばらく走ることになる。ダム湖には四季折々の表情があり良い句材なのだが、なにせ運転中なのでじっくりと見てという訳にはいかない。瞬間的に眼に入った景を脳みそに焼き付けておき、ちょっと広い場所に車を止めて俳句帖に書き留めるような事を繰り返す。たぶん脳みその老化防止には役立っているのではないかと思う。掲句はそんな中の一句、、、。(2014年秋詠)

屋根裏にまだある暑さ秋彼岸

あると便利だろうと造ってもらった屋根裏の小部屋、梁が丸見えで板一枚をはさんで屋根という構造は、真夏には地獄の暑さとなる。少々濡れた物でもすぐに乾くし、たぶんダニ退治も出来るだろうと、使わない布団類はここに上げて置く。暑さ寒さも彼岸まで、そろそろ次の布団をと上がったら、相変わらず暑かった。真夏ほどではなかったが、、、。(2011年秋詠)