山荘の朽ちし看板そぞろ寒

某紅葉の名所にある立派な山荘、表は高い塀と門でいつも閉ざされています。庶民には縁のない物と思ってと、近寄る事もなかったのですが、昨年ふと見ると、門の上にかけてある山荘の名前を書いた看板がずいぶん傷んでいるのです。あれっ?と思って、脇の路地を入って様子を見ると、建物も庭もずいぶん荒れています。どうやら長い間手入れもされていない様子、、、。(2018年秋詠)

クリスマスリース引戸の真ん中に

純和風の家の玄関引戸の真ん中にシンプルなクリスマスリース、いつも見かける四季折々の飾り付けの一つだが、上手いもんだ、いったいどんな方住まわれているのだろうと思いながら通る、、、。(2017年冬詠)

初桜言ふて強面くづれけり

ちょっとまだ早いかなと思いつつこの句を、、、。朝の散歩で時々会う、昔はさぞや怖い人だったろうと思える老人。出会い始めた頃には服装も、携帯で誰かと話している口調も、本当に怖そうな人だった。それが一時見なくなり、次に見るようになった時には顔はそのままだったが、身体が不自由なようだった。いつも間合いを計ってこわごわと挨拶をしていたが、掲句の日、私が桜を見上げていると近づいてきた老人は、いきなり「咲いたなあ」と言って、何とも言えないクシャクシャの笑顔を見せた。それ以後も間合いを計って挨拶をしているが、前ほど緊張はしなくなった、、、。(2015年春詠)

彼岸会や若き住職子沢山

実家のお寺の住職は若くて、年齢から見れば自分の子供のようなものですが、よく勉強されていて法話を聴くのが楽しみです。と言ってもお寺の行事に参加する訳でもなく、父母の法事の時ぐらいのものですが、父の忌日が春の彼岸、母の忌日が秋の彼岸とこれまた横着者の息子には都合が良いのです。昨年が父の十三回忌、来年が母の七回忌で今年はちょうどその隙間で何もなし、お寺への足も遠のきそうです。その住職、たまにお会いするその度にお聞きする子供の数が増えているような、、、。(2015年春詠)