廃屋の裏も廃屋夏の蔦

吉備津神社吟行での句。吉備津神社から「はなぐり塚」への途中、何軒かの廃屋があった。吟行に行くと時々同じような場所に出会うことがある。不便な田舎暮らしをしている者にとっては、なんでこんなところに廃屋が(?)と思うような場所なのだが、最近は、それぞれの家に事情があることがよく分かる。ちょっとだけその家の裏を覗いてみたら、もう一軒廃屋があった。(2008年夏詠)

くちなはの先づは紋様確かむる

今年は蛇が多いと思ったが、毎日が休日で昼間に散歩することが多いからかも知れない。何度出会っても蛇には驚かされるが、そのぶん句にもなりやすい。昼間出会うのはシマヘビや青大将で驚きはするが、危険な蛇ではない。この辺りに出没する危険な蛇と言えば蝮であるが、生きた蝮に出会ったことはまだない。それでも一応はその紋様で安全確認をするようにしている。蝮には表面に銭型の独特の模様があり、腹にも不気味な斑点模様がある。体型は他の蛇に比べると短く太い。(2008年夏詠)

里山の続きは深山桐の花

津山から高梁へは国道313号線を走る。昔に比べるとずいぶん走りやすくなったなあと、そんなことを考えながら走っていると、昔すれ違うのにも苦労した旧道と橋が見えた。止まってみると橋はすでに崩れかけており、通行禁止になっているようだった。その橋の向こう側には大きな桐の木があり、花をつけていた。昔はそのあたりに家もあったような気がするのだが、記憶は定かではない。(2008年夏詠)

寄り添ふて水脈ひとつなる残り鴨

いつ帰るのだろうかとやきもきしているうちに、ある朝突然に居なくなっていることに気付く。残った番の鴨が寄り添って水面を滑っている。どんな理由で帰る鴨と残る鴨に分かれるのだろうか。残っているのは前から二羽だけで行動していた鴨だろうか。なんてことを考えたりするが、帰った鴨も残った鴨も同じ顔で見分けがつかない。寂しさのある季語と思う。(2008年春詠)

花筵昔べつぴん足さする

足守、近水園(おみずえん)、初めて合歓の会に参加させていただいた時の句。俳句をお休みして5年ほど経っていた。読売新聞の俳句欄にH女史の名前を見つけた私は迷うことなくメールを送った。ほどなく返事が来て、何度かやり取りをしているうちに合歓の会へ誘われるようになった。とうとう断れなくなって出かけたのがこの日だった。H女史との再会、そして先生を始めとした合歓の会のそうそうたる皆さんとの出会い、それが今に続いているのです。縁って不思議なものですね。(2008年春詠)