冬晴や渡る気のなき交差点

田舎の交差点は車と一対一になることが多いので、青信号の交差点に立って考え事をしていると、車の人に不審がられますが、その点都会はいいですね。お互いに無関係な関係で、、、。もちろん考えているのは、控えている苦会、いや句会のこと、、、。(2010年冬詠)

秋夕日一人になれば肩落し

今はそんな事もないのですが、勤めていた頃はそれなりに努力はしていましたし、緊張もしていました。それが、仕事が終わり一人取り残されて夕日を見たりすると、ふっと力が抜けるのです。今は力が抜けどおし、、、。(2010年秋詠)

出払ひしいつも鳴く犬山椒の実

曲がり角のお家の柴犬、通るたびに吠えるので、いつの間にかそれに慣れっこになって、こちらも適当にあしらっていた。それがある朝、声が聞こえず姿が見えない。そうなると寂しいもので、塀の中をあちこち眺めたが犬の姿はなく、代わりに山椒の木に色づいた実を見つけた。今まで犬に気を取られて気づかなかったのだろうと思いながら角を曲がると、向うから来る飼い主に連れられたその犬に出会った。どうやら外ではおとなしいらしく、済ました顔をして通り過ぎていった、、、。(2010年秋詠)

秋時雨来るたび庭師車へと

あれ、もう北風だ、と思ったら「木枯一号」だったらしい。一転して今朝は澄んだ空に朝日が輝いている。風は無いが、ちょっと寒い。庭を見るとたくさんの落葉、とうぶんは日々の仕事に困らない、、、。掲句はまだ現役の頃、会社でお願いしていた植栽の管理、自分たちの車のほうが居心地が良いのだろう、雨が降り出すたびに車の中へ、、、。(2010年秋詠)

居残りて開く句帖や背に西日

久しぶりに元勤務先を訪ねたら、昔から消防設備の点検をお願いしていた会社のNさんに出くわした。ちょうど点検の日だったようで、作業服の腰には重そうに工具がぶら下がっていた。こちらはTシャツにGパン、向うのほうが先に気づいたようだった。「お久しぶりです」「やあ、元気そうですね」「どうされて?」「辞めました」「えっ?」「ちょうど定年だったんですよ」「それじゃあ今は?」「無職です、何か仕事があったらお願いしますよ」「いやいや、私だって延長で働いている身で」「そうですか、でも仕事があるうちが花ですよ、がんばってください」「はい、ありがとうございます」向うに見慣れた運送会社のトラックが止まっている。降りてきた運転手は、髪は白くなっているが、これも日々なだめたりすかしたりしながら、無理をお願いしていたOさんだった、、、。(2010年夏詠)

羽衣のやうに掛かりし蛇の衣

蛇がどうやって殻を脱いでいくのか、実際に見たことはないが、脱ぎ捨てられたものを見ると、どうやら最初に刺のようなところを見つけて、そこに口のあたりを引っ掛けて脱ぎ始めるようだ。後はゆっくりゆっくり、脱ぎにくいところは石や木の角のようなところを利用して擦るようにして脱いでいくのだろう、、、。掲句、河原の木にキチンと掛かって風にゆれている蛇の衣、遠目には羽衣、とは見えないか、、、(笑)。(2010年夏詠)

物干のパジャマだらりと走り梅雨

中国地方の統計を見てみると、1963年の入梅は5月8日ごろとなっています。子どもの日を過ぎたと思ったらもう梅雨か、敵わんなあ、と牛二少年が思ったかどうか、記憶にはありません。遅い年では1968年、6月24日ごろとなっています、、、。(2010年夏詠)