家出猫戻らず三日春の雪

夜出してやると朝には戻って窓のところで待っている。「ゆき」はそんな猫だった。何日か帰らないことは前にもあったが、それが猫の習性と理解していた。しかしその時は違った。一日目から変な予感がして、通勤の途中に姿を捜したりした。次の日も帰らず、三日目の朝が雪となった。大きな春の雪がしきりに降っていた。なぜだか解らないが、もう帰ってこない。ふっとそんな気がした。(2011年春詠)

春の堰マイナスイオン溢らしむ

我家から吉井川沿いに下って行くと嵯峨井堰に出る。ちょっと長めの散歩に良い距離で、休日にはここまで歩き、堰を見て帰途につく。堰は四季を通じてさまざまな顔を見せる。冬は水量も少なく乾いた堰堤が顔を見せているが、春になると中国山地の雪解け水も加わり一気に水量が増える。水は堰堤に沿って滑らかな曲線を描き、一枚の白布のようにも見える。そして大きな音と共に落ち込んでいく。限りなく飛沫が上がり、限りなくマイナスイオンが生れているように感じる。深呼吸をし、水の匂いと共に、マイナスイオンを思いっきり吸い込む。写真は時季的にはもう少し遅く、川向こうの桜がきれいな頃のへたくそな一枚。(2011年春詠)