はらみ猫こちら見てより足早に

どうやら猫の恋の季節は終わったようで、落ち着いて日を浴びる猫を見かけるようになった。掲句の猫、何匹入っているのだろうかと思うほど重そうなお腹で道を横切っていた。どうどうとしたものだったが、それでもこちらに気づくと心持ち足早に。その足取りはこれ以上は無理と言いたげに見えた、、、。(2016年春詠)

鳥の影見えて落花のしきりなる

散り始めた桜並木の中に、ひとところだけ散り方の激しい所がある。よく見ると重なった花の枝の奥に何やら動くものが見える。と、気づいた瞬間にバタバタと鵯が飛んで行った。それでまたひとしきり激しく落花が続くのだった、、、。(2016年春詠)

花冷や遠き工場の朝の楽

朝の始業のチャイムやら、ラジオ体操の音楽やら、歩いていると遠くの工場や会社からいろんな音が聞こえてくる。自らがその中で働いていた頃には聞くことが無かった音、こんな風に聞こえるものなのかと、五年も経って改めて思う、、、。(2016年春詠)

上ばかり向いて都会の春の闇

先日所用で久しぶりに大阪へ行ってきました。大阪駅近辺がきれいになって、高速バスの到着する場所まで変わっていて、まるで分かりませんでした。元から詳しいわけではありませんが、それでも記憶を頼りに出来るだけお上りさんに見えないように歩いたりしていたのですが、もうまるっきりダメ、またお上りさんになってしまいました。昼間でしたが頭の中は真っ暗、まるで春の闇、、、。(2016年春詠)

流れ来て流れ行く花見て飽きず

流れを見ながら何んとはなしに考え事をするというのは子供の時からの癖です。朝から実家の前にある小川を眺めていて、あまりにも帰りが遅いので父が迎えに来たりしていました。今でも流れを見るのは好きですが、特にこの時季は格別ですね、、、。(2016年春詠)

その上にとんび輪を描く遠桜

毎年のことですが桜が咲けば桜の句を詠んでしまいます。どう詠んでも類句類想の域を出ないだろうとは思いますが、そう思いつつも詠んでしまいます。それぐらい魅力がありますね、桜は。昨年詠んだ中ではこの句でしょうか、自分で気に入っているのは、、、。(2016年春詠)

まだ影の無きほど小さし水草生ふ

当たり前ですが水草も生えたばかりは本当に小さいです。用水路の平らな底がなんだか緑色っぽいと思ってよく見ると、糸のような水草が見えます。見えだすと後は早いですね。もう立派に水底でゆらめいていますよ、、、。(2016年春詠)

解けさうで解けぬ知恵の輪養花天

引き出物で頂いたカタログの中から知恵の輪を選んでしまったことがあります。ほんの出来心ですが、これがなかなか難しい。かと言って説明書の答を見るのは嫌で、結局数個は解いたものの、残りはきれいに箱に入ったままもう数年になります、、、。四月でなくても馬鹿です、、、。良い季節になりましたね、、、。(2016年春詠)