煌々と裸電球懸煙草

父が役場に出だしたのは私が小学生になってからで、それまでは葉煙草農家だった。その頃の葉煙草の生産は子供の眼から見ても大変な作業だった。暑い盛りに収穫し、縄にずらりと吊るして乾燥場に入れる。乾燥場には大きな窯場があって、これまた暑い盛りに何日も温度と湿度を管理しながら火を焚き続けるのである。何人かの生産農家の若者の共同作業で、乾燥場に併設された裸電球の下がった板場に茣蓙を敷いただけのようなスペースで仮眠を取りながら交代で火の番をする。夜ともなればその裸電球の下で、関係のない近所の若者までが集まって毎晩のように酒盛りが始まるのである。子供が乾燥場に居るのを許されるのはその頃までで、煌々と輝く裸電球と大人の笑い声を振り返りながら自分の家に向かうのだった、、、。(2018年秋詠)

人来れば鳴く鈴虫の買はれけり

道の駅に行くといろんな物が売られている。メダカ、クワガタ、カブトムシ、そして鈴虫も。こんなところで鳴くのかな?と思って待っていると鳴いた。ちょうどその時客が来て、迷わずその鈴虫に手を伸ばした、、、。(2018年秋詠)

ゆつくりと歩くも修行鉦叩

愛犬もみじの足が急激に遅くなったのが昨年の今頃だった。いずれこういう日が来ると覚悟はしていたが、いざそうなるとやはり辛かった。その日の状態を見て犬に合わせて歩くようにしたが、ゆっくり歩くのも簡単なようで結構大変な事だった。それが修行という言葉になった。その頃の句、、、。(2018年秋詠)

どつと来て群に加はる稲雀

終戦記念日です。早いものです、もう稲が黄色く稔り始めています。そろそろ雀の出番です。昨年はずいぶん沢山の雀が出没していました。最近の田圃には鳥用の威しも案山子もほとんど見ることが無く、雀にとっては好い環境になったと言えるのでしょうね、、、。(2018年秋詠)