枇杷の花海近ければ海を向き

昨年の11月、児島「風の道」吟行での句。海の見える遊歩道脇に、自生したものだろうか、何本かの枇杷の木があった。海を向いて少しだけだが白い花が咲いていた。掲句を詠んで句会にも出したが、後になって枇杷の花にしてはちょっと早すぎるような気がして、ずっと気になっていた。それが先日、散歩の途中で花が咲いている枇杷の木を見つけた。こちらはいつもの道の見慣れた木、間違いようがない。やっぱりあれは枇杷の花で間違ってなかったんだと、なんだかホッとした。ちなみに我が家の枇杷の木は、まだ咲いていない、、、。(2016年冬詠)

冬ぬくし地蔵二体が寄り添ふて

山の中の無住寺、本当は寒い日だったのです。それがふっと日が差してきて、その中にお地蔵さんが二体寄り添うように立っているのを見ると、何だか急に暖かい心持ちになってこんな句に、、、。(2016年冬詠)

里神楽お神酒過ぎたる手力雄

実家のある田舎の秋祭りは今日から明日、今夜には奉納の備中神楽があるのだろうと思います。手力雄(タジカラオ)は手力雄命(タジカラオノミコト)、天照大神が天岩戸に隠れた時にその戸を開けた剛力の持ち主です。備中神楽では岩戸開きの演目で登場します。掲句はそれを思い出して詠んだ句ですが、普通の秋祭りの神楽では見られないかも知れません、、、。(2016年冬詠)

枯蟷螂ほんとに枯れて動かざる

保護色なのでしょうか、この季節になると枯色のカマキリを見るようになります。それも生気のないどす黒いような枯色、死んでいるのかなあと思ってつつくと少しだけ動いてまた止まってしまう。掲句は反対、死んでいるのかなあと思ってつついたら本当に死んでいた、、、。(2016年冬詠)

裏木戸が主たる入口石蕗の花

冬になりました。石蕗の花がきれいに咲いています。掲句は一人暮らしのお宅の玄関脇の石蕗の花。何度行っても玄関が閉まっていて応答がない。困って隣で聞くと、「玄関はいつも閉まっとる。横の木戸から入って奥のほうで呼んだら出て来るから」と教えられた。なるほど、石蕗の花のもう一つ横が細い道になり、古びた木戸へと続いている。こちらはすっと開く。家の横を通って裏へ行くと二階へ続く階段がある。そこで大きな声をするとガタガタと二階で音がして、ようやく返事が返ってきた、、、。(2016年冬詠)

蛇口より氷柱一寸外厠

やっと寒波が抜けそうな雰囲気です。掲句、古い冬の句です。記憶をたどって行くと、たぶん田舎へ帰る途中の峠にあるうどん屋の外厠だろうと思います。昔ははこれが普通の冬の寒さだったような気がしますね。とは言うものの、寒波はもう懲り懲りです。早く本物の春が欲しいですね、、、。(2001年冬詠)