纏まれば羽音恐ろし稲雀

稲雀もまとまれば恐ろしいぐらいの数になります。昨年ぐらいから急に数が増えたように感じるのですが、夕方ともなれば近所の神社の竹藪に集結し、賑やかに騒いでいます。本当の理由は分かりませんが、昔ほど農家の方が雀を気にしなくなったのかも知れませんね、、、。(2017年秋詠)

水口の音を転がし落し水

早いですね、先日句会へと429号線を走ると、山間部ではもうすっかり実りの秋でした。稲刈り間近の稲が黄金色に光っていました。落し水はとっくの昔に終わっているのでしょう。落とし水に出会うのは、実際はなかなかないことです、、、。(2017年秋詠)

解体の槌音高く秋天へ

数年前から良い仕事をするなあと注目していた某社、最近ではテレビでもCMを見るようになった。解体という言わば裏方の仕事だが、手際よくきれいな仕事をする。従業員にさぼっている姿が見られない、目が合えば会釈を返してくれる。時代のニーズもあるだろうが、なるほどなあと思っている今日この頃です、、、。(2017年秋詠)

送舟残る渡しの船だまり

掲句は昔日の思い出、今は川に物を流すのは禁じられているはずですが、それでも時々川岸にとどまっている送船を見かける事があります。それも、悪い事に舟も飾りも発砲スチロール、いつまでたっても自然には還らない、、、。(2017年秋詠)

住み旧りし空広き地の鰯雲

私の育ったところは両側に山が迫ったⅤ字型の谷底のような所でした。だから空も狭く、鰯雲は山から山にかかり空一面を覆ってしまいます。それに比べると今住んでいる所は空が広い。高い建物もなく、空がずいぶん遠くまで見えます。だから鰯雲も空一面を覆うなんてことは無く、のんびりと流れて行くように見えます。鰯雲を見る度に空の広さを想い、この地で過ごした年月を想い、そして想いはいつの間にか故郷へと移って行くのです。故郷で過ごした年月は、今ではこの地で過ごした年月の何分の一かに過ぎないのですが、、、。(2017年秋詠)