きちきちの塀に当たりて引き返す

街中の路地、羽音に「あ、こんなところに精霊バッタが」と思う間もなく、飛んでいったバッタは行き止まりのレンガ塀にぶつかった。そして、そのまま落ちるのかと思ったら、偶然か、瞬間に向きを変えてこちらへ戻って来た。見えない訳ではないだろうに、虫はどうしてぶつかるまで飛んで行くのだろう?雨戸を何度も何度も打つコガネムシもそう、、、。(2014年秋詠)

きちきちを次々たたせ野の車

河川敷には一応道はあるが、草が生い茂り、車で走るにはちょっと難儀で、大きくゆれながらゆっくりと進んでくる。これは堪らんとその車の前から次々にバッタが飛び立つ。降りては迫り来る車にまた飛び立つ。と、これを繰り返して車は通り過ぎて行った。それにしてもずいぶんたくさんのバッタが生息しているものだと、その光景に感心した、、、。(2013年秋詠)

きちきちが次のきちきち発たせけり

いわゆる精霊飛蝗であるが、子どもの頃は飛蝗と言えばこれを指していた。比較的背の高い草原に多い。近づくとキチキチキチと翅を鳴らして飛立ち、数メートル先の草原に舞い降りる。そこからまた次がキチキチキチと飛立っていく。限りなく続けば面白いのだが、、、、、。少しずつ秋も深まってきた。(2010年秋詠)