寒禽の声に心経紛れけり

「室戸」その5 私はただの旅行者として最御崎寺へお参りしましたので、お経を上げることはしませんでしたが、遍路をされる場合は本堂と大師堂の二箇所で般若心経をあげるのが作法だそうです。バスツアーの遍路の皆さんは案内の方のメガホンに合わせて大きな声で読経されます。一人の方は人それぞれで、すがりつくように読経されている方もありました。どちらかと言えば一人で回られている方の落ち着いた読経の声のほうが心に沁みる感じがしました、、、。(2011年冬詠)

寒禽や急坂吾に容赦なく

久米南町は川柳の盛んなところです。いたるところに川柳の句碑があります。中でも津山線の弓削駅からほど近いところにある川柳公園とそこに続く遊歩道の川柳の小道には沢山の句碑があります。ほど近いですが、川柳公園があるのは山の中腹で、そこに続く川柳の小道の坂は急です。川柳の小道を通らす、車で公園まで行けますが、川柳の小道の急坂もまた味があります。足に自信のある方は覚悟して歩いてみてください、、、。掲句はその急坂での句、鬱蒼とした森に不安を感じながら初めて登ったときの句です、、、。(2009年冬詠)

山寺の閉ざし寒禽鳴くばかり

美咲町の本山寺での句。本山寺は私の好きな寺で、時々行きます。最初に行ったのは二十年ほど前になりますが、まだ道路も整備されておらず、田圃の間の道や細い山道を通って、山門の下に着きました。今は道路も整備され、山門の下に広い駐車場がありますが、当時は草ぼうぼうでした。三重塔のある一角は当時もきれいに整備されており、全く知識がなく訪れたものですから、異次元の世界に出会ったように驚き、塔を見上げた記憶があります。いつ行っても人は少ないですが、冬は特に少なく、鳥の声ばかりが聞こえます。(2011年冬詠)

寒禽の呼び合ふ声も深山かな

ホテルから程近いところに阿南公園がありました。山全体が公園のようでしたが、整備されているのは途中までで、その先には標識はあるものの、鬱蒼とした森と竹薮が広がっていました。聞こえるのは鳥の声だけの、余所者を拒むような、まさに深山です。朝の短い時間で歩けるのはこのあたりまでで、途中の山の中腹にある小さな展望台で海を眺めて引き返すのを散歩コースとしました。ほとんど人と出会うことはありませんが、それでも何度も歩くと、何人かの同じ人に出会い挨拶を交わすようになりました。<阿南4>(2011年冬詠)