末黒野と同じ色して二羽の鳩

焼こうとして焼いた野も不注意から焼けた野も、焼けてしまえば皆同じで、しだいの見慣れた風景になって行く。毎年この時期になるとそんな野が増えていく。まだらになった野に動いているのは二羽の鳩だった。番だろう、付かず離れず、まるで保護色のように焼けた野に溶け込んで動いていた、、、。(2013年春詠)

野火あとの看板残るひみつきち

散歩の途中の家並から少し離れた田圃の中に、古びた売土地の看板に蔦の絡まった草ぼうぼうの空地があった。その空地に掲句の少し前あたりから男の子たちの声がするようになった。草に隠れて姿は見えないが、なにやらガラクタの類が置いてあり、にぎやかな声がする。そんなことが一週間ほど続いただろうか、ある日通りかかるとその空地がすっかり焼け野原になっていた。もちろん子どもの姿は無く、溶けて原型をとどめていないガラクタが数個転がっていた。看板も下半分ぐらいが焼けていた。何となく看板の裏を覗くと、平仮名で書いた「ひみつきち」の文字が焼けずに残っていた、、、。(2013年春詠)