とうふ工場南国めきて棕櫚の花

川向うにある青い屋根のとうふ屋さんの工場、川のこちら側から見えるのは工場の裏側だが、その敷地の境目あたりに高い数本の棕櫚の木が並んでいる。青い屋根とマッチしてちょっとした南国の雰囲気を見せている。とうふ屋さんだから朝が早いのか、私が通る頃はいつも静か。今その棕櫚の木に花が咲いている、、、。(2021年夏詠)

深曇る空より垂れて棕櫚の花

昔は田舎ならどこにでもあったと思う。それは棕櫚縄であったり、葉っぱを使った蠅たたきだったりの需要があったからだろう。私の実家の前にも一本植えられていて毎年毎年伸びて行ったが、高くなり過ぎたのか、百姓を止めたからか、気づいた時には切られていた。掲句は車で走っていて見かけた棕櫚の木、傍にある廃屋の屋根よりも高く、花房の黄色が際立って見えていた、、、。(2018年夏詠)

捨てられし家より高く棕櫚の花

網目状の皮は棕櫚縄になるし、細く裂ける葉とよく撓る茎はハエ叩きの材料にはちょうど良い。だから実家にも植えてあった。下のほうから順番に利用して行くので年毎に背が高くなり、終いには梯子をかけても取れない高さになり切られることになる。掲句は空家になった家の傍の棕櫚の木、大きくはなったが既に利用する人もなく、切る人もいない。それどころか、家の屋根も半分落ちかけている、、、。(2015年夏詠)