ファインダー中に婿どの秋の空

これはファインダー越しの婿殿、青空の下で凛々しく見えました。雨が降ったら大変だね、と言いながらその日を迎えたのですが、幸い抜けるような青空の日でした。普段の行いが良かったのでしょうね、、、。(2015年秋詠)

爪高く上げて重機の秋の空

こんもりと生えた小さな林の上に、伸びるだけ伸びた形で重機の腕と爪が静止して覗いていた。上方に開いた爪は、まるで空を掴もうとしているかのようだった。たまたま休憩時間だったのか、工事の音は無く、真っ青な空を背景に動かない重機の爪は、絵の中の一部品のようだった。いつもは威圧的に見える重機の爪が、この時ばかりは風景の中に溶け込んでいた、、、。(2014年秋詠)

建前のクレーンがぬつと秋の空

建前のクレーンはいつもぬっとした感じで屋根の上に現れている。遠くから見ると動くでもなし、止まっているでもなし、よく見るとやっぱり動いているのかと言った感じである。先日覚えのある辺りにクレーンを見つけ、犬の散歩がてら足を伸ばしてみたら、やはり私がかつて「西東三鬼読本」をいただいたお婆さんの屋敷があった所だった。ひと目で最新のソーラー住宅といった二階建ての屋根の構造、その上に何人もの男たちの緊張した姿があった。少し離れてそれを見上げている若い男女が施主だろう。犬を連れて通り過ぎようとしたら、にこやかに挨拶をしてくれた。そういえば我家にも同じような日があったなあ、、、。(2013年秋詠)

マンションの競ふ高さも秋の空

岡山駅の南、厚生町あたりでの句。見上げれば建設中のマンションが何棟も秋の空に高さを競っていた。私の住んでいるこの辺りに出来るマンションはほとんど二階建、それほど需要があるとは思えないのだが、空地がどんどんマンションへと変わって行く。最近はそれも一区切りついたのか、田圃がいきなりソーラー発電所になるところも出てきた、、、。(2013年秋詠)

組体操少年秋の空にあり

組体操と言えばいつも一番上かその下ぐらいで、あまり楽しかったという記憶はない。最後に笛の合図で一斉に潰すのが組体操の見せ場だが、これは上のほうだったからか、痛かった記憶はない、、、。子どもの中学校の運動会が雨後のぬかるんだグランドであったことがある。こんな中で、と思うような中で組体操が進んで行き、見学席からは感嘆の声が上がっていたが、最後の笛と同時に上がったのはお母さんがたの悲痛な叫び声だった。退場門へ向かう子どもたちの体操服は一様に泥だらけだったが、子どもたちにとっては良い思い出になっただろう、、、。(1999年秋詠)