ベランダの錆びし鉄柵花八手

朝ゴミを出しに行く所がちょうど昔住んでいた家の前で、ゴミを出して帰ろうとするとその佇まいが目に入る。今住んでいるのは独り身の無頓着な方で、玄関脇の八手は奔放に育って二階の窓に届きそうになっている。ちょうど花の季節、木が奔放なら花も奔放、その奔放に咲いたクリーム色の花がさびれた古い家の佇まいとよく合っている、、、。(2000年冬詠)

花八手昭和名残の木の引戸

岡山野田屋町あたりで見つけたお宅、路地と路地の入り組んだ街の角に、取り残されたように佇んでいた。玄関脇の植え込みに、八手が白い花をつけ初冬の日差を浴びていた。柱に小さな郵便受を取り付けた、庇の短いこじんまりとした玄関には、今時珍しい木の引戸が付いていた。周囲には近代的な住宅が立ち並ぶ中で、そこだけが昭和の時代だった。まるで、西岸良平の漫画に出てくるような家、、、。(2014年冬詠)

身を寄せてすれ違ふ路地花八手

何度も登場した路地の、これも登場したことのある花八手です。ちょうど路地を抜ける手前の塀の上から覗いています。いかにも日本的な路地でした。先日通ったら路地を出たところにあった小さな衣料品店が改装中でした。また一つ思い出の風景が消えていきます、、、。(2002年冬詠)

下町に音のいろいろ花八手

機関区の周りに多いのは、やはり鉄道関係の会社や工場ですが、それ以外にも小さな町工場がたくさんあって、いろいろな音が通りに漏れてきます。突然シューッと音がして、道路脇の溝に伸びたパイプから蒸気が噴出したりすることも、、、。(2012年冬詠)

花八手路地をぬけるに十歩ほど

家と家のすき間を抜けると交差点に出る。幅の半分ぐらいは水路で、通れるのは徒歩か、自転車か、せいぜいバイクまでという、いつもの短い路地です。この路地にはいくつも句を貰いました。そんなありがたい路地の片側、塀際の柿の木の下に忘れられたように植えられている八手です、、。ある日私のバイクの後をついて来て、私の後から迷わず路地に入って来られた軽四がありましたが、案の定抜けられず脱輪されてしまいました。「急がば回れ」、知らない方でしたが気の毒でした。(2010年冬詠)