一手打ち一手待つ間の遠花火

ずいぶん昔、会社の先輩Nさんと四国の工場へ、オーディオ機器の開発応援に行ったことがある。会社の使われなくなった古い寮を事務の女性が住める程度まで掃除してくれ、しばらくNさんと二人で生活した。Nさんは東京への長期出張の間に将棋会館に通ったというほどの将棋好きで、とても私が勝てるような相手ではなかった。それでもNさんは、その部屋に残されていた将棋盤を見つけると、足りない駒を紙切れで作り、いやだと言う私に毎晩相手をさせた。ある晩将棋盤を囲んでいると遠くで音がして、割れて一枚だけ透明になったガラス窓の、ちょうどそのガラス一枚に収まるほどの小ささで遠くの花火が見えたことがあった。きれいだった、、、。(2012年夏詠)