茶の花や空家となれば人訪はず

久し振りに道を変えて歩いてみた。途中にある古いお家、かつては小柄な上品そうなお婆さんが一人で住まわれていた。生垣の間に何本か茶の木が植えてあり、冬になると隠れるようにして白い花が咲くのだった。亡くなられたと聞いたのはもう一年以上前になる。それから空家となっているのだろう、門の内の小さな庭には草が伸びている。生垣も、何だか知らない蔓性の植物が絡まっている。確か茶の花が、と思って見ると、あった!生垣の奔放に育つ他の木の間で、身を細めるようにしている茶の木に、以前と同じように隠れるように白い花が、数個、、、。(2018年冬詠)

茶の花やころがりさうに坂の道

棚田沿いに急な坂道が続いている。表面はコンクリート舗装、一応すべり止めの刷毛跡が付けてあるが、年数が経って表面はざらざらになっている。上りはまだ良いが下りが危ない。必要以上に足に力が入ってしまう。一息には無理で、ちょっと一休みと腰を伸ばして道端を見ると茶の花が咲いていた。目立たない花、、、。(2017年冬詠)

茶の花や空家静かに崩れゆき

かつては手入れの行き届いた生垣だったのだろう。その生垣の中に数本の茶の木が混じっている。普段は奔放に伸びた周囲の植物の中で全く目立たない存在だが、この季節になると白いおとなしい花をつけ、その花によって茶の木があった事を思い出すのだった。空家のある場所は滅多に通らないが、通るたびに少しずつ崩れていき、今年はとうとう倒壊してしまった、、、。(2015年冬詠)