一夜にて蜘蛛の王国我が庭に

寝ぼけ眼で新聞を取りに出ようものなら忽ち顔の辺りが蜘蛛の巣に覆われる。取ろうとするが採り切れない時の気分の悪さ、最低。そうならないように最近は新聞受けまで両手を顔の前に上げて歩いて行く、、、。(2020年夏詠)

囲を抜けて蜘蛛一匹を連れ歩く

前にも書きましたが、この時期歩く度に新しい蜘蛛の巣に出会います。ぶつかる前ならそ避ける、ぶつかったらエイヤッと払って通り抜けます。問題はその払った蜘蛛の巣と一緒に蜘蛛が身体にくっついて一緒に出掛けてしまう事です。思わぬ時に首筋あたりがモゾモゾとして、何かと思って手に取ってみれば蜘蛛、、、。(2015年夏詠)

蜘蛛の糸引けば向うの枝動く

毎日毎日蜘蛛の巣が出来て、注意しているのに引っかかってしまう。それも朝いちばんに新聞受けまで歩く間に。蜘蛛にとっても迷惑なことで、せっかく作ったところに餌にはならない人間がかかるのだから。蜘蛛のほうも少しは考えて通れと思っているかも知れない、、、。(2015年夏詠)

降りだして蜘蛛の囲の蜘蛛ゆれ始む

面白いことを発見したと、こんな句にしてみました。大きなクモの巣の中央で動かないクモを見ていたら、雨が降り出したとたんに自分で巣をゆすりだしたのです。それも相当大きく、ユッサユッサといった感じで。これに何の意味があるのか分からないのですが、新発見、、、!(2014年夏詠)

玄関を出るやするりと朝の蜘蛛

蜘蛛もどちらかと言えば嫌われることが多いですね。私は蜘蛛自体はそんなに嫌いではありませんが、見えない糸に絡まれるのは嫌ですね。掲句、出勤のため玄関を出た途端に上から蜘蛛が下りて来た。絡まれる前で良かったと、とりあえず糸ごとに生垣のほうへ移動してもらいました。朝の蜘蛛は縁起が良いと言いますが、何も無い一日でした、、、。(2011年夏詠)

女郎蜘蛛しつかと空をつかみけり

竹竿の先に細い竹で団扇ぐらいの輪を作り、それに蜘蛛の巣をぐるぐると巻きつける。これで高いところの蝉を採るのですが、蜘蛛の巣の中でも女郎蜘蛛の巣が、強さでも粘着力でも一番良かった。そんな訳で、女郎蜘蛛には親しみを感じるのです。大きな体の鮮やかな黒と黄の縞模様で、頭を下に空中をしっかりと掴んだ姿は、風格すら漂わせているように感じられます。(2010年夏詠)