居残りて開く句帖や背に西日

久しぶりに元勤務先を訪ねたら、昔から消防設備の点検をお願いしていた会社のNさんに出くわした。ちょうど点検の日だったようで、作業服の腰には重そうに工具がぶら下がっていた。こちらはTシャツにGパン、向うのほうが先に気づいたようだった。「お久しぶりです」「やあ、元気そうですね」「どうされて?」「辞めました」「えっ?」「ちょうど定年だったんですよ」「それじゃあ今は?」「無職です、何か仕事があったらお願いしますよ」「いやいや、私だって延長で働いている身で」「そうですか、でも仕事があるうちが花ですよ、がんばってください」「はい、ありがとうございます」向うに見慣れた運送会社のトラックが止まっている。降りてきた運転手は、髪は白くなっているが、これも日々なだめたりすかしたりしながら、無理をお願いしていたOさんだった、、、。(2010年夏詠)