お喋りをしたく鶺鴒寄り来る

鶺鴒は長いサラリーマン生活の中で、最も親しかった鳥かも知れない。会社の通用口の廂や屋根の隙間によく巣を作った。鶺鴒の寿命がどれくらいなのか知らないが、定年までには何世代も代替わりし、そのうち私の顔も覚えたのかも知れない。ずいぶん近くまで寄ってきてお喋りをして行った。ある年一羽の鶺鴒が通路に死んでいた。まだ新しかったが車も通るところなので、拾って片付けた。それをどこかで見ていたのだろう、しばらくの間私は悪者としてしきりにまとわり付いて責められた。(2011年秋詠)