代掻の引き連れてゆく鷺の列

<早苗籠>-4 代掻は鳥たちにとってはご馳走にありつける絶好の機会なんだろう。トラクターの後をついて行く鷺はもちろん、鳶や烏も獲物を求めて舞い降りて来る。トラクターの運転手はしっかり前を向いている。ついて行く鷺たちは例の抜足差し足、ちょっとユーモラスでもある、、、。(2017年夏詠)

早苗籠スプリンクラーの水貰ふ

<早苗籠>-3 そもそも早苗籠で良いのかと思う事もありますが、歳時記では一昔前の稲作風景の苗代と早苗籠です。現代は田植機用の苗を育てる平な箱が苗代から早苗籠までの代用です。言うなれば早苗箱でしょうか。ずらりと並べて、少ない所はジョウロで、大がかりにされている所はスプリンクラーで水遣りをされています。生え揃った早苗の緑に水玉が光り、近くで見ると綺麗です、、、。(2017年夏詠)

滲みつつ田水入り初む夜明前

<早苗籠>-1 田圃の乾いた土が水口の所から黒く染まり、やがて浸み込めなくなったところから水面となり、夜明け前の薄明かりの中で光り始める。少しずつ少しずつ、まるで世界地図を広げるようにその範囲を広げていく。日本の原風景の始まり、、、。(2017年夏詠)

溝浚へ溝の中にもハーブの芽

毎年この時期になると町内の溝浚えがある。田圃に水が入る前に掃除をと言う意味があるのだろうが、我が町内に田圃をしている人はいない。それに難しい場所でもないのでいつも和気あいあいの内にさっさと終わってしまう。昨年は溝の中にミントを見つけた。今年は小さな亀が一匹、、、。(2017年夏詠)

教会の前は竹やぶ蜥蜴這ふ

見かけは普通の簡素な民家のようだけど、壁に教会と書いた大きな看板があるから教会なのだろう。アルファベットで何やら書いてあるのが宗派なのだろうが、よくわからない。すぐ前の細い道は未舗装、さらにその前は竹藪だ。おやおや、何か動いたと思えばなんとトカゲではないか、、、。(2017年夏詠)

手を合せをれば藪蚊が耳元に

吟行途中に見つけた藪の中の小さなお社、一応拝まねばなるまいと小銭を投じ二礼二拍手、手を合せる。人の無いのを良い事に一人願い事をつぶやいていると、耳元に何やら嫌な予感、しまったと思った時にはもう遅かった。痒いのなんの、、、。(2017年夏詠)