羊歯の芽ののの字を解く春の雨

雨が降ると急に植物が勢いづく。庭に吊るした釣忍の”の”の字の芽も伸びてきた。田舎に帰った時に祖父が作ったばかりの物をくれた。今から三十年以上前、子供が生まれるより前の事だった。中には祖父が自分で焼いた木炭が保水材として入っている。それだけで他に肥料をやる訳ではないが、水さえ切らさなければ今でも夏には涼しげな葉っぱを茂らせてくれる。植物の命は長い、、、。(2017年春詠)

釣舟のうつらうつらと春の湖

句会へ向かう途中のダム湖、四季を通じて釣舟の姿が見られます。釣舟は川舟の上に窓のある箱をのっけたような形、たぶん風よけなのでしょう。だから釣人の姿は見えません。うつらうつらしているように見えるのは釣舟のほう、、、。(2017年春詠)

春泥に足をとられし靴の跡

某神社での吟行句。ひと所整備されていない未舗装の雨が降ると水たまりが出来る春泥の道がある。気づけば避けられる短い距離だが、横の桜ばかり見ていると足を取られる。たいてい一つや二つはそんな足跡が、、、。(2017年春詠)

水ありて命湧きけり蛙鳴く

川の流れが分岐して土手のすぐ下に細い流れが出来ている。細いけれど流れは豊か、軽やかな音を立てて流れている。春になるとその音に蛙の声が加わる。鳴いている位置が良いのだろうか、ケロロケロロと水音に負けないぐらい軽やかな声、、、。(2017年春詠)

安全な距離を覚えて雀の子

朝の道、路上で雀の子が虫を啄んでいる。手の届きそうな距離に近づくとその虫を咥えて飛び立ち、数メートル先に降りてまた虫を啄みはじめる。この繰り返し、羽があるのだから同じ道に降りなくても、と思うのですが、、、。(2017年春詠)

人も野も包みて霞やはらかし

暖かくなったり寒くなったり、ではなく、暑くなったり寒くなったりで今年の春はどうなっているのでしょうね。ほどよく暖かい春が良いですね。と、都合の良いことを思っています。掲句は昨年のそんな一日、、、。(2017年春詠)