川普請重機大きく人小さく

散歩の終点と決めている吉井川の井堰で工事が始まった。看板を見ると「水門開閉機器の更新」と書いてある。よくわからないが、土手から河川敷の公園を横切って河原までアクセス用の道が造られ、大きな重機が動いている。工事を見るのは好きで、叱られない程度まで近づいてしばし眺める、、、。(2016年冬詠)

榠樝の実持てば凸凹手にそひて

阿智神社には数本のかりんの木があり、沢山の実をつける。この季節になると社務所の窓口の所に「自由にお取りください」の貼紙と共にいくつもの実が置かれている。貰ってどうするわけでもないが手に取ってみる。いくつもを持ち直して、あの独特の凸凹が手になじむ物を一つだけ頂く、、、。(2016年冬詠)

雨戸繰るそこに朝日のさす枯木

二階の雨戸を閉めた暗い室内から、それでも小さな隙間から漏れる光に、晴れの日を予感しながら雨戸を繰る。ちょうど目の高さが葉を落とした辛夷の樹上、それぞれの枝の冬芽が朝日を受けて銀色に輝いて目に飛び込んで来る。好きな瞬間、、、。(2016年冬詠)

山茶花や主の帰り待つやうに

長い間一人暮らしだったお婆さんが施設に入られたのは昨年の春だったろうか。掲句はそれから半年、散歩途中の道から見えるその家の庭に見事に咲いた薄いピンクの山茶花を見つけた時の句。さらに一年、今年も山茶花は咲き出したが、庭は少し荒れて、去年ほどの美しさは無い、、、。(2016年冬詠)