寒林の疎にして夕日透けにけり

冬のこの時期はちょうど散歩の時間帯に夕日が沈むことになる。普段何の気なしに見ている遠くの山が雑木山だったのだと気づいたのが掲句の景を見た時だった。ちょうど沈みかかった夕日の中に山の頂の幾本もの骨格だけの木の影が揺らめいて見えていた。注意して見なければすぐに裏にある夕日の光に飲み込まれてしまうぐらいの影だったが、注意してまともに夕日を見られたのも冬ならでは、とも言える、、、。(2014年冬詠)

うらぶれて冬田の中の道一人

ちょっと句とは関係ない温水洗浄便座の話です。とある所で便意を催してトイレに入ったらコントロール部分が分かれた温水洗浄便座だった。コントロール部分はリモコンになっていて壁に取り付けてある。我が家と同じだと思いながら使って、止めようとしたらスイッチが利かない。電池切れ?!慌ててリモコンを壁から外して本体に近づけて操作したが、これでも止らない。お湯は勢いよくお尻に出っぱなし。下手に動くと服まで濡れかねない。と、ここで、お尻を洗われながら冷静に考えました。我が家と同じなら、手の届くあたりにコンセントがあるはず。後を見ると在りました!すぐに手を伸ばしてコンセントからケーブルを抜くと、止りましたよ、やっと。やれやれでした。皆さん覚えておいてくださいね。こういう場合は慌てずにケーブルを抜くのですよ、、、。(2014年冬詠)

山茶花や庭師離れて樹形見る

散歩の途中で見る山茶花がきれいだ。先日、とあるお宅の玄関前にバケツに投げ込むようにして大きな満開の山茶花の枝が活けてあった。周囲のタイルの上に落ちた山茶花が散らばって、これも見事だった。このお宅、時々面白い形で目を楽しませてくれる。中学生ぐらいの子供がいる若い夫婦、、、。掲句は昨年、句会への途中で通りかかった別の庭先での景。会心の作の山茶花なのだろう、道路を渡って離れて樹形を見て頷く庭師の満足そうな顔、、、。(2014年冬詠)

冬耕のゆつくりと打つ鍬の音

近所の老夫婦、天気が良ければ一日中畑に出ておられる。元は精米所やら製麺所やらをされていた方で、畑と言っても多くがある訳ではなく、一年中同じ畑を脳梗塞のリハビリを兼ねてこつこつと耕されている。何を植えられているのか、間近で見ないから分からないが、夏の間は草の勢いのほうが強く、端まで耕した頃には反対側は緑に戻っているような状態で、また始めから耕されるように見えた。さすがにこの時期になるとそういう事もなく、日差の中でゆっくりと鍬を使う音が聞こえてくるのだった、、、。(2014年冬詠)

大綿の風あるやうに漂へり

風があるんだか無いんだか、ふわふわふわふわ漂っている綿虫。俳句では恰好の句材ですが、あの正体はなんだろう?ということでネットで調べてみたら「カメムシ目・腹吻亜目・アブラムシ科に属する昆虫」と書いてありました。えっ!カメムシやアブラムシの仲間なの、、、。(2014年冬詠)

捨てられし時計の動く十二月

12月8日は太平洋戦争の開戦日です。今年は戦争について、いろいろと考える事の多い年でした。掲句は昨年、12月8日に詠んだ句でも12月8日を詠んだ句でもありませんが、何かちょうど合う句かなと思って書きました。実は散歩の途中に詠んだ句ですが、その背景は書かないほうが良いでしょう。適当に想像してくださいね、、、。(2014年冬詠)