敗れたる球児に来たり夏休

高校野球も終わりました。県大会の予選から甲子園の決勝までは実に長いですね。掲句は昨年の、まだ県大会の途中だった頃、とある高校のグラウンドの外を通りかかった時の句です。県予選で負け、新チームが始動していた頃、三年生のここで引退した球児たちに、初めての長い夏休みが来た頃でした、、、。(2014年夏詠)

捕虫網つかめぬトンボ入りにけり

西川緑道公園を歩いていて、若いお母さんと捕虫網を持った女の子に出会った。女の子は小学校低学年ぐらいで、大きめの捕虫網を持て余し気味だった。その時はそのまま通り過ぎ、しばらくしてまた通りかかると、捕虫網で地面を押さえて二人で何やら相談している。見ると網の中にはトンボが一匹動いている。「二人とも虫が掴めないんですゥ。それで、どうやって虫籠に入れようかと思って、、、」、トンボの掴みかただけ伝授して別れましたが、さてその後どうなったでしょうか、、、。(2014年夏詠)

名前なき地蔵に乾く盆の花

岡山の西川緑道公園に小さなお地蔵さんがあります。説明書きが無いので、どんな由来のお地蔵さんか分かりませんが、いつも飲み物やお花が供えてあります。昨年の八月の句会、通りかかるとお花が萎れていました。お世話される方がお盆休みだったのかも知れませんね。で、こんな句になりましたが、今年のお盆には掃除も行き届き、鮮やかな色のお花が溢れていました。その時の句は来年の今頃に、、、。(2014年秋詠)

光年の距離を一夜に星の恋

七夕は過ぎちゃいましたが、夜空の綺麗な季節です。月齢も若いし、ペルセウス座流星群も見頃ではないでしょうか。掲句、そんな夜空を眺めていてふと気づいた時の句です。天体を立体的に捉えてみましたが、どうでしょうか、、、?(2014年秋詠)

上り切る蝉の高さの歩道橋

長い人生の中で日常的に歩道橋を渡る暮しはしたことが無かったのですが、今は岡山の句会へ行く度にやむを得ず歩道橋を渡ります。隣にある公園のポプラの、ちょうど蝉が鳴いている高さになります。歩道橋の中央で、下を走る車の群を見るのも面白いですが、これも長い間見ていると、ちょっと勘違いされそうな気がしますね、、、。(2014年秋詠)

秋暑し大魚の骨を犬が嗅ぎ

河原に釣人が残していった魚、持ち帰らないならどうしてリリースしてやらないのかと、私なんかは思うのです。外来魚でもなさそうだし、、、。まあそれでも、生命の連鎖で、残された魚は鴉や鳶が食べに来ます。残った骨もいずれ無くなるのは狐でも食べに来るのでしょう。運悪くその間に通りがかってしまった時の句、という事です、、、。犬も端から食べる気は無いようですが、食い尽くされて太陽に晒された骨はなんとも魅力的な匂いがするらしく、しきりに嗅いでいます。さしあたり漁師町で売っている一夜干しのようなものでしょうか、、、。(2014年秋詠)