まだ借家住まいの頃だから、かれこれ三十年前ということになる。実家に帰ると祖父が手慰みに作った吊忍があった。葉も少なく、色も若々しい、いかにも作りたてといった感じだった。私が興味深そうに眺めていたら、祖父が「やろうか?」と訊いてきた。「うん、ちょうだい」それでその吊忍は我家に来ることになった。以来三十年、少し痩せて形もいびつになったが、今年も青々と葉を出している。中に木炭を入れていると言っていたので、それが長寿の秘密かも知れないなあと思いながら、かけたそばから下に落ちる水を見ている、、、。(2013年夏詠)