路地奥の井戸ある暮らし夏つばめ

下津井吟行での句。細い路地を入って行くと今も古い共同井戸が残っている。すぐ後には急斜面の山が迫っており、その斜面にへばりつくように民家が並んでいる。どの家にも所せましと洗濯物が干され、路地を器用に燕が抜けていく、、、。(2018年夏詠)

夏つばめ寺の大屋根越えて来る

つい仰いでしまうのが寺の大屋根。五月の空を背景に絶妙な反りを見せる屋根を仰いでいると、いきなり屋根の上に白い腹を見せて上昇する燕が現れた。燕は現れると同時に速度を落とし、次の瞬間にはもう角度を変えて速度をあげる。見とれる間もなく、たちまちに頭上を過ぎて行った、、、。(2017年夏詠)

夏燕孕みし胎を翻す

燕は一夏に二回から三回子育てをするそうです。だから忙しい。まだ一番子の子育てをしながら二番子をお腹に宿すこともあるのでしょう。掲句、目の前で身を翻した燕のふっくらとした腹が印象的だった。母となるものの美しさは人間も動物も同じで美しい、、、。(2014年夏詠)

カメラ手の美女を掠めて夏燕

これも高松城跡での句、よくぶつからないものだと思う燕の飛翔、、、。掲句の美女は本物の美女ですが当日、美女は美女でも着ぐるみの美女に遭遇、何ともそのいでたちが気になるので、ネットで検索して行き着いたのが「わこの きぐるみ日記」というページ、思いのほか積極的に活動されている方で、以来毎日楽しみに覗いているページです。美女が気になる方、検索してみてください、、、。(2014年夏詠)

垂直にビルの空あり夏つばめ

街には街の、田舎には田舎の燕が夏を謳歌している。考えてみれば燕はずいぶん適応性にすぐれた鳥だ。田舎の農家の静かな納屋の中でも、一晩中明かりの点った賑やかな都会の駅舎でも、平気で子育てをしている。燕は秋には南に渡り、また翌年戻って来るというが、都会で生まれた燕は同じ都会へ戻って来るのだろうか、、、。(2011年夏詠)