海岸の一夜波音星月夜

夕方のテレビの中継でキャンプ場の波音が聞こえて来た。ああ、そう言えば昔、ちょうどこんな波音を聞きながらキャンプしたなあと、学生時代の自転車旅行の途中で一泊した山口県光市のキャンプ場を思い出した。ふと画面に目をやると、海岸線の風景もなんだか懐かしい感じがして目を離せないでいたら、しばらくしてテロップに山口県光市の文字が流れて来た。なんだか不思議な気がした、、、。(2014年秋詠)

洗面器流され秋の川に出る

台風、秋雨前線と雨続きで川の水量が増えています。勢いもいい。幸いに被害が出るほどではありませんので安心して眺めています。掲句は一昨年、増水した川を流れる洗面器です。たいていは途中でひっくり返るものですが、流れ始めて間がないのか、うまいこと上を向いてどんぶらこどんぶらこ、、、。(2014年秋詠)

野分後雲の混ぜられゐたりけり

今年は台風が来ないのかと思っていたら、次から次によく来ますね。先日の10号で被害があった岩泉、懐かしい感じがして記憶をたどって行ったら、学生時代に確かに行ったことがある場所でした。駅前の旅館に泊まり、次の日の朝、バスで龍泉洞という近くの鍾乳洞へ行きました。その旅館、相部屋になったのですが、お互いに無口で、とうとう一晩、一言も話をしませんでした。今思えばおかしな話ですが、思い出すきっかけが水害の報道だったのは残念なことです、、、。(2014年秋詠)

空蝉のすがりし形みな同じ

西川緑道公園での句。岡山での句会がなくなって西川緑道公園にもしばらく行っていない。きっと今頃は頭の中にまで響いてくるようなクマゼミの声に覆われていることだろう。注意して見ると下の植え込みの中には無数の蝉の殻が見つかる、、、。(2014年秋詠)

会釈して笑顔の老女明易し

私の母もそうでしたが、女性の多くがご主人を亡くされて少し経つと、一時的に精神障害が起きるような気がします。たいていの場合は時間と周囲の気遣いで元に戻られるので、病人扱いせずに静かに見守ってあげるのが一番と思っていますが、近所のそんな女性の中の一人、普通の笑顔が返ってくるようになった日の句、、、。(2014年夏詠)

明易し踏切の音よく響き

我が家から二軒おいて用水路、その向こうに吉井川の土手があり姫新線の踏切がある。踏切の音は最初大きくて、少し小さくなりしばらくして列車が来る。春夏秋冬変わらないが、夏の朝の踏切の音は軽やかに良く響く、、、。(2014年夏詠)