もう五日ぐらいになるだろうか、老釣師が毎日同じ場所に陣取って鯉を狙っている。邪魔にならないように会釈だけで通り過ぎるのだが、数メートル過ぎたところで川を覗くと三尺ぐらいはありそうな大鯉がかすかに尾びれを動かしながら身を潜めている。ひょっとして老釣師が何日も狙っているのはこの大鯉かも知れないと思い、老釣師のほうを見るとじっと糸の先の水面に集中して、こちらも動かない。まるで鯉と老釣師の間に一本の緊張の糸が張られているような気さえした、、、。(2015年冬詠)
渡辺牛二の俳句ワールド
もう五日ぐらいになるだろうか、老釣師が毎日同じ場所に陣取って鯉を狙っている。邪魔にならないように会釈だけで通り過ぎるのだが、数メートル過ぎたところで川を覗くと三尺ぐらいはありそうな大鯉がかすかに尾びれを動かしながら身を潜めている。ひょっとして老釣師が何日も狙っているのはこの大鯉かも知れないと思い、老釣師のほうを見るとじっと糸の先の水面に集中して、こちらも動かない。まるで鯉と老釣師の間に一本の緊張の糸が張られているような気さえした、、、。(2015年冬詠)