五月雨に黙して通夜の人帰る

いよいよ梅雨ですね。通夜、葬儀がまだ自宅で行われていた頃の句です。町内のとあるお宅での通夜を終え、連れ立って雨の中を帰途につく。雨のせいもあるが、いつもは饒舌な女性陣も黙って傘の人となっている。急ぐでもなく、適度な間隔を保ったままそれぞれの自宅の前まで来ると、簡単な挨拶を交し門の中へと消えて行く。一人消え、二人消え、やがて夜の闇に一人取り残されてしまう。(1998年夏詠)