拭きあげしビールグラスや麦の秋

「グラスはねえ、拭いちゃあダメよ。熱いお湯で洗ってね、そこの布巾に伏せといて。そうするとね、曇らないのよ。曇ったグラスは嫌でしょ」と、旅館でバイトを始めた最初に住み込みのお姉さんに教えられた。この日から洗い物をすると必ずこの事を思い出す。思い出しながら、拭きあげたグラスを棚に戻している、一人の土曜日の昼、、、。(2011年夏詠)

くろ猫の眼の浅緑麦の秋

いつもの散歩コースに見つけた麦畑。おまけに黒猫までもがこちらを見ている。猫は犬と違い黙ってこちらを観察するだけで、決して挨拶はしてこない。こちらもあえてちょっかいは出さないが、なんとも見事な眼をした黒猫だった。(2012年夏詠)