水口の音のかろやか余苗

<早苗籠>-7 余苗は補植が終わるまで田圃の入り口近くにまとめて植えておかれます。補植の作業が終われば処分されたり、そのままの状態で次第に衰えて行ったりするのが余苗の運命です。ちょっと可哀そうですね。水口の水音はあくまで軽やか、、、。(2017年夏詠)

植田水澄んで足跡日燦燦

<早苗籠>-6 田植はあっという間に終わるのですが、それから何日もかけて補植の作業をされている姿を見かけます。一歩一歩足の運びに気を付けて、腰を曲げて、見るからに大変そうです。そして足跡が残るのですが、その足跡も最初はくっきりとしていたものが、日を追うて角がとれて薄くなって行くのです、、、。(2017年夏詠)

早苗田の筋目正しき植ゑつぷり

<早苗籠>-5 今の田植は田植機、それも乗用の何条も一度に植えられる田植機で、あっと言う間に終わってしまいます。とは言え、そこは腕の見せ所、きれいに列の揃った植え跡は気持ちの良いものですね、、、。(2017年夏詠)

代掻の引き連れてゆく鷺の列

<早苗籠>-4 代掻は鳥たちにとってはご馳走にありつける絶好の機会なんだろう。トラクターの後をついて行く鷺はもちろん、鳶や烏も獲物を求めて舞い降りて来る。トラクターの運転手はしっかり前を向いている。ついて行く鷺たちは例の抜足差し足、ちょっとユーモラスでもある、、、。(2017年夏詠)

早苗籠スプリンクラーの水貰ふ

<早苗籠>-3 そもそも早苗籠で良いのかと思う事もありますが、歳時記では一昔前の稲作風景の苗代と早苗籠です。現代は田植機用の苗を育てる平な箱が苗代から早苗籠までの代用です。言うなれば早苗箱でしょうか。ずらりと並べて、少ない所はジョウロで、大がかりにされている所はスプリンクラーで水遣りをされています。生え揃った早苗の緑に水玉が光り、近くで見ると綺麗です、、、。(2017年夏詠)

滲みつつ田水入り初む夜明前

<早苗籠>-1 田圃の乾いた土が水口の所から黒く染まり、やがて浸み込めなくなったところから水面となり、夜明け前の薄明かりの中で光り始める。少しずつ少しずつ、まるで世界地図を広げるようにその範囲を広げていく。日本の原風景の始まり、、、。(2017年夏詠)

溝浚へ溝の中にもハーブの芽

毎年この時期になると町内の溝浚えがある。田圃に水が入る前に掃除をと言う意味があるのだろうが、我が町内に田圃をしている人はいない。それに難しい場所でもないのでいつも和気あいあいの内にさっさと終わってしまう。昨年は溝の中にミントを見つけた。今年は小さな亀が一匹、、、。(2017年夏詠)