目の前を発ちてきぎすの眼の紅し

今になって考えてみれば、紅かったのは眼ではなく顔で、その中にギョロリとした眼が見えたはずです。なのに、なぜかこの瞬間には眼が紅いと思ったのです。急な羽音で頭の中の回路が誤動作したみたいです、、、。(2022年春詠)

人間の渡れぬ中州きぎす鳴く

上流に出来たダムに伴う河川改修で川がきれいになったのはこの地に住みだして間もない頃だった。それが次第に水流が変化し、二手に分かれて間に中州が形成されるようになった。そこに草が生え、木が育ち、今では本来の向う岸が見えないぐらいの大きな中州になっている。二手に分かれた流れはどちらも水量が多くて人が渡るのは困難、まるで鳥の天国のようになっている。雉の繁殖には最適なのだろう、よく鳴き声が聞こえる、、、。(2017年春詠)

中州へと渡るすべなしきぎす鳴く

川は毎年少しずつ流れを変える。近くの吉井川も十何年か前の大水の時に、リセットされたように一度きれいになったが、その時に出来た細い流れが今では飛び越せない幅になり、淵まで形成して水鳥たちの格好の遊び場になっている。その向うに広がった中州は大きな柳の木までが成長し、ちょっとしたジャングルのようになり、四季折々の鳥の声が聞こえてくる。この頃は雉の声が、そろそろ恋の季節なのだろう、時折間の抜けたように聞こえてくる、、、。(2012年春詠)