残菊へ日差かたむく杣の家

急峻な山の斜面を削った僅かな平地に、山を背にして杣の家はある。家の前に狭い庭があり、その先はまた切り立った石垣となっている。覗くと足がすくむ高さだが、ギリギリの所に植えてある小菊の群と、それを倒れないように守っている杭と横に括った細い竹が、防護柵の代わりとなっているだけだ。夕日は谷を隔てた向かい側の山に沈んで行く。山の日暮は早い、、、。(2002年冬詠)

残菊を束ねし紐の白さかな

通勤途中にある酒屋の前の、大ぶりな鉢に大輪の菊を一本仕立にしたものも見事だと思うが、その手前の道路沿いの畑の隅に、植えるとも無く植えられたような小菊の群もまた見事だと思う。そんな小菊の群もシーズンの終わりに近づくと、保てなくなった姿勢を、エイヤッと括られてしまう。荷造り用のビニール紐の白さが際立っていた。(2000年冬詠)