風鈴や風の道ある通し土間

倉敷にある大橋家住宅です。入口に大きな暖簾がかけてあり、入ると広い土間が裏口まで続いている。広い家の家じゅうが開け放たれて風鈴の音が聞こえている。この家を建てた人は、ここが倉敷で一番涼しい風の通る所と分かっていたのだろうと思うぐらいに、涼しい風が吹き抜けて行く。座敷に座っていると、このまましばらく昼寝が出来たらと、そんな気持ちになってしまった、、、。(2015年夏詠)

風鈴の仕舞はれてゐる葬の家

私がここに住み始めた頃は、葬式は故人の家で行うのが普通だった。さすがに墓穴を掘るなんて作業は無かったが、町内の長老の指示に従って祭壇の準備やら飾り付けやら買物やらと動き回ったものだった。やがてそこに葬儀屋さんが入るようになり、葬儀屋さんの指示に従えば良くなってずいぶん楽になった。と思っていたら今では故人の家での式まで無くなってしまった。唯一残っているのは、亡くなられた当日に故人の家に集まって行うスケジュールの打ち合わせだが、密葬、家族葬ということになればそれも無しとなるだろう。掲句、その集合した故人のお宅での句、、、。(2014年夏詠)