春泥や轍伝ひに行潦

午後の散歩で出会うその女性は、近くに一軒だけある個人商店へ日々の食材を買いに、毎日通われているようだった。最初はヨチヨチ歩きの子供を連れていた頃で、それで声をかけて頂けたのだろうが、以後会釈を交わすようになった。私の連れている子供はやがて二人目に替わり、そうこうしているうちに犬が加わり、犬だけになり、今では大きな黒ラブに替わっている。女性のほうはいつも農作業用の帽子をかぶり、長い間自転車で乗って通われていた。その帽子は今も全く変わらないのだが、この冬から自転車が手押し車に変わってしまった。ちょっとした坂道も平気で登っておられたのが、最近は途中で休まれていることが多い。そんな時に挨拶をすると、目深にかぶった農作業用の帽子の下から弱弱しい笑顔が返ってくる、、、。(2014年春詠)