山国の空深曇りえごの花

歳時記を見ると「果皮には麻酔効果があり、搾汁を川に流して魚をとるのにつかわれた」と書いてある。そう言えば昔、今は亡き近所の悪ガキの下で遊んでいた頃、魚が取れると言うその悪ガキが仕入れて来た半端な知識での指導のもとに、我々子分はまだ青い木の実をせっせと石で叩いて潰した記憶がある。だが、小さいながらも魚影の濃い川だったが、流す量が少なかったのか、やり方が悪かったのか、結局一匹も取れなかった。そして、悪ガキからその漁の提案が出てくることは二度となかった。ああ、あれがエゴノキだったのかと知ったのは、俳句を始めてずいぶん経ってからだった、、、。(2016年夏詠)

鳶も子を育てるころぞえごの花

吉井川の川向こうに岸辺まで山がせり出したところがあり、高木が茂っている。この時季岸辺には、これも大きなえごの木に咲く白い花がちょうど良い距離感を持って眺められる。高木のどこかに鳶が営巣しているのであろう、えごの花に合わせるように、鳶の子の甘え声が聞こえるようになる。鳶の子は襲われる心配がないのか、その甘え声は大きくてうるさいぐらいに賑やかだ。ちょうどあのピーヒョロロを甘え声にした感じの声、、、。(2011年夏詠)