金風や梁に逆さの千社札

ついでに古い句です。千社札、貼るところを実際に見てみたいと思うのですが、いまだに行き当たったことがありません。長い竿の先で、糊をつけた札を器用に操って貼るのでしょう。目立つようで目立たない、古くなって柱や梁と同化したような千社札を見ると、いつごろの物なのだろうと想像が膨らみます。そんな中にある日、真新しい札が増えている!それも逆さまに、、、。(2001年秋詠)

金風や高き脚立に腰を据ゑ

高い脚立の一番上に腰を下ろして、少しだけいつもと違う高さの風景を眺めていると、吹く風はまさに金風、先人は上手いことを言うものだと思う。家の三方向を生垣にしている。当然その手入は私の仕事で、それほど広い訳ではないが、少しずつやっていると一年がかりになってしまう。暑ければ休む、寒ければ休む、雨の後は濡れるから休む、と休みばかりで、結局一年がかりになってしまう。「上手いもんじゃなあ、プロになれるで」なんて冗談を言う人もあるが、こんなに時間をかけていてはプロにはなれない、、、。(2014年秋詠)

金風の納豆工場豆煮る香

退職する何年か前から、屋外に出ると風に乗って時々大豆を煮る匂いがするようになった。てっきりどこかに食堂でも出来て、と思っていたら、じつはそれが同じ工業団地内に出来た納豆工場の大豆を煮る匂いだと知ったのはずいぶん後だった。どうりで、食堂なら豆ばかり煮ることはないかと、一人納得、、、。(2013年秋詠)