穴出でし蛇が二枚の舌使ふ

掲句は昨年の初お目見えの蛇です。出てきたばかりの蛇は動きが緩慢、観察するにはちょうど良いのです。先の割れた舌をチロチロ動かすのがよく見える。ちなみに今年の初お目見えは4月4日でした。1メートルはありそうな青大将でした、、、。(2015年春詠)

苗札の写真見事な花ばかり

この地に住みだして勉強したことですが、だいたいゴールデンウィーク前までは晩霜の恐れがあるので野菜苗は植えないほうが良いようです。もちろんプロの方は別です。とは言うものの、すでに新聞の広告は花盛りで、ホームセンターを覗けば野菜も花もフルカラーの苗札付きで所狭しと並んでいます。つい誘われそうになってしまいますが、ここが我慢のしどころです。最近の苗札は丈夫にできていて、目印に立てておくといつの間にか苗札だけが残っていたりしますね。それも綺麗なままで、、、。(2015年春詠)

丸々と米屋の屋根の雀の子

散歩の途中で手広くお米を扱っている工場の傍を通ります。たくさんお米があるからと言って、雀が勝手に食べられる場所に置いてある訳でもないでしょうが、休日に通ると屋根に鳴く雀の数が多く、それも丸々と太っているのです。平日は静かです、、、。(2015年春詠)

春朝の風を覚えてゐる身体

既視感(きしかん)と言われるものがあります。初めての場所なのに、前にも来た事があるように感じたり、初めての事を前にも経験したような気がするような事です。ちょっと違うかも知れませんが、私の場合風が吹いてくると、「んっ、この風は(?)」と思う事がよくあります。どこだったかなあと考えていると、一応それらしい所を思い出すので既視感ではなく本当の既視なのかも知れませんが、同じ風は二度と吹かないとも思います、、、。(2015年春詠)

奔放に咲いて散り初む若桜

散歩途中に桜並木の間から見える吉井川の中州に自生した桜の木があります。少し遠く、三年ほど前に見つけた時はほんのりとピンク色になった小さな木で、もしかしたら桜かなあと思ったぐらいでしたが、昨年はどうやら桜のようと思えるぐらい、そして今年はやっぱり桜だと確信できるように育ちました。手前の桜並木はもう三十年を越した木ばかりで、ここ数年は色ももう一つですが、この中州の若木は花色も鮮やかで、枝も元気そうです。しかし、残念な事に中州なのです。大きな出水があれば流されてしまうでしょう。だから余計に一年が経ってこの花を見ることが嬉しいのかも知れません。来年も見えますように、、、。(2015年春詠)

遮断機や椿木蓮雪柳

プールへの道の途中に踏切があります。その傍に司法書士の看板の出た大きなお家があります。庭には四季おりおりの花が咲きます。普段でも一旦停止の度に見て通ります。遮断機が下りているともう少しゆっくりと見ます。それで、とりあえずこの日に眼に入った花を並べてみました。遮断機の向うには釣具屋さんがあります、、、。(2015年春詠)

能舞台春の落葉の二三枚

掲句は阿智神社の能舞台、たいてい中央に何か飾られていますが、この時は何も無く代わりに春の落葉が何枚か、、、。我が家の庭も春の落葉がはげしいのです。大きくなりすぎたクロガネモチが今を盛と散っています。隣家の庭にまで落ちるのが困ったものですが、何も言われないのを良いことにそのままにしています。でも、心の中ではいつも申し訳なく思っているのです。この際ごめんなさい、、、。(2015年春詠)

一吹きに川面染めゆく落花かな

西川緑道公園での句をもう一句。どちらかと言うと咲き始めより満開を過ぎて散って行く桜を見るほうが好きです。掲句のような、風のひと吹きで川面を染めて行く景も好きですし、ひっきりなしに散り続く景を眺めているのも好きです。どちらにしろ短い期間ですね。また一年、、、。(2015年春詠)