近くにあった元工場兼ショールームのような建物でした。長い間に表の広いガラスが割れ、スプレーでの落書きが目立つようになっていました。その解体作業、三日ほどだったでしょうか、きれいな平面が出来上がったのは。解体の技術に感心したものです。あれから一年、その後はいまだに平面、、、。(2016年冬詠)
タグ: 暮早し
暮早し人住む家に明かり点き
今年は国勢調査の調査員をしました。自分の住んでいる町内が調査範囲になるのですが、それでも知らないお宅や空家が何軒もありました。荒れて蔦の絡まったような家はそれと分かりますが、てっきり人が住んでいると思っていた家が近所で聞くと空家だったりしました。どうも分からないので、夜に何度も明かりの様子を見に行ったりしました。ようするに近所は分かっているようで分かっていないのです。掲句、それより一年前の句です。当たり前ですが人の居ない家には明かりは点かないのです、、、。(2014年冬詠)
精米所軒を灯して暮早し
近所の米穀業者、稲刈が始まる頃から年内ぐらいは忙しそうにされている。工場の外に早々と灯りを点けて、フォークリフトが忙しく走りまわっている。ちょっと遅く散歩に出ると、ちょうど土手の上からその光景に出会うことになる。職種は違うが、何だかなつかしい、それでいてちょっと寂しい気持ちになる。四年前の今頃は、、、。(2013年冬詠)
暮早し灯して通る一両車
実際単線の線路の傍で日々走る一両だけの列車をみて暮していますが、同じような一両車の句が次々に出来てしまいます。最近これはイカンと反省もしているのですが、困った時の一両車でもあります、、、。(2013年冬詠)
暮早し老舗旅館の長廊下
旅館に泊まること自体がなくなってしまいましたが、昔はありましたね、建増し建増しで迷路のように廊下がつながった旅館が。安く泊まろうとするものだから端っこのほうの部屋で、食事に指定された広間まで行くのに迷子になってしまうようなことが、、、。それはそれとして、掲句はれっきとした老舗旅館、、、。(2000年冬詠)
暮早し眉月高く光り初め
冬至。日の暮れがもっとも早いのは冬至よりも十日ほど前のようだ。掲句はそんな早い日暮れの頃、見上げた空に眉月が次第にその光を増し、存在を明らかにしていくのだった。ちなみに今年の今日は旧暦11月20日だから、月は既に満月を過ぎ、痩せ始めて朝の西空に残っている頃だ、、、。(2010年冬詠)
ふり返る窓にわが顔暮早し
外を見ようとして振り返ると、すでに外は暗く、窓硝子には自分の顔が映っていた。顔は中途半端に汚れた硝子にデフォルメされ、哀れに疲れて見えた。慌ててブラインドの紐を引いた。(2010年冬詠)