路地あらば人あり春を描いてをり

倉敷美観地区での句。行けばたいてい何人かの絵を描いている人に出会うが、この日はやたらと多く、行く先々でスケッチブックに向かっている人に出会った。何人かで固まっていたり、一人ポツンと描いていたりと様々だが、いずれも春を描いていることに変わりはなかった(覗いて見た限りでは)、、、。(2017年春詠)

勢ひを音とし猛る雪解川

掲句は昨年の429号線沿いの谷川、激しく音を立てていかにも冷たそうな色をしてしぶきをあげている。水量の増えた川は怖いが魅力がある。今年は去年より雪が多い。きっと激しい音を立てているだろう。今週は同じところを通って句会へ行く、、、。(2017年春詠)

骨董屋裏にガラクタ孕猫

ちょっと覗いて見たくなるのが骨董屋。欲しいものがあるわけではないが、とにかく入って一通り眺めてみる。案の定目ぼしいものはなく、外にでて行き過ぎようとして店の横に細い路地を見つけた。路地もまた入ってみたくなる所。塀もない骨董屋の裏はガラクタだらけ。割れた甕やら、ブリキの空缶、タンスもある。その上で日を浴びていた猫が、こちらを見て気怠そうによっコラショと立ち上がった。重そうなお腹、貫禄の雌猫、、、。(2017年春詠)

囀や鳥にやさしき遊休地

田圃が埋め立てられたのはずいぶん前、すっかり記憶の片隅に追いやられています。最初は宅地にというような話でしたが全くその気配はなく、いつの間にか鬱蒼と茂った野原になり、やがて狐の姿まで見かけるように、、、。(2017年春詠)

格子より指出て春の埃ふく

倉敷市本町にて。鑑賞中の格子の間からいきなり指が出て来たので、正直おどろきましたが、格子の掃除って大変そうですね。景観を守るのも人の力があってこそです。倉敷格子、正式には親付切子格子と言うそうです、、、。(2017年春詠)

水音のくるりくるりと春の川

川底のちょっとした凸凹と水量が音に変わるのですから不思議なものですね。春になって水量の増えた小川の軽やかな音、くるりくるりとまるで小さな水車を回しているような音がするのです、、、。(2017年春詠)