倉敷あきさ亭での句。いつも季節の素材を活かした手料理で持て成される。目で味わい、舌で味わい、そして句にして味わう。なら良いのだが、たいていは舌の段階で止まってしまう、、、。(2016年春詠)
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首まはしコキコキ音が鳥帰る
コハクチョウの北帰行が始まったと聞いたのはもうずいぶん前のような気がする。散歩途中で見かける川の鴨たちもそろそろ旅立つのだろうが、もう帰りますと言ってくれる訳ではなく、知らないうちに旅立ってしまう。何だか川が広くなったなあと感じる日が近いのは確かだ、、、。(2016年春詠)
春眠の時に遅速のあるやうな
見たいTVがあって炬燵に入っているとつい眠ってしまう。気が付くと後の祭り、困ったものです、、、。(2016年春詠)
この猫も親戚すじや春の昼
ここに家を建てた頃は側を通る道路も通行量が少なく、捨て猫が何度もありました。それも毎年同じ毛並みの同じ顔の猫です。ある時ちょっと離れた酒屋さんに買い物に行ったら、なんとその捨て猫と同じ顔の大きな猫がいるではありませんか!出て来たお店の女将さんを見ると、あっ、いつも家の側を通るおばさんだ!なるほど、、、。その後ほかの人に聞いた話では猫好きのそのおばさんは実家がその酒屋さんで、毎日我が家の側を通って店を手伝いに行っているとか、、、。(2003年春詠)
春の鴨水の中にも恋生まれ
鴨はどこで恋をするのだろう。水の中か、陸に上がってか。やはり落ち着いて恋が出来るのは水の中だろうか。なんて暇な事を考えたりするのです。そろそろシーズンなのではないでしょうか、、、。(2016年春詠)
死人てふ人だかりあり冴返る
徒歩通勤をしていた頃の古い事です。田圃の向こうに見える神社の傍に朝から人だかりがあり、パトカーの赤色灯が回っていました。何だろうと思っていたら、ちょうどそちらから戻って来た知り合いが、行き倒れの死人らしいと教えてくれました。寒い朝のことでした、、、。(2003年春詠)
蜷の道鳥の足跡にて途絶ゆ
水量が減って川底の土がむき出しになっている。幾筋も見えるのは川蜷の移動した跡だろう。しかし蜷の姿は無い。代わりにあるのは大きないくつもの鳥の足跡。たぶん鷺のもの、、、。(2016年春詠)
髪切つて耳の後に春の風
最近は早いのと安いのが売りの散髪屋さんに行きます。面倒なのでほとんどお任せです。気が付くと後の祭り、切られた髪は戻らない(掲句とは関係ありません)、、、。(2003年春詠)
凍ゆるむ朝一番の鶏鳴に
どの家か分からないのですが、近所の農家に一軒だけ鶏それも雄を飼っているようで、朝の散歩の途中で時々コケコッコーと大きな声が聞こえてきます。寒い間は聞こえなかったので、夜明が早くなった、ということなのでしょう、、。(2016年春詠)
夕暮や男無口に野火放つ
そろそろ田圃の準備が始まっています。それに伴ってあちこちで畦を焼く姿を見かけるようになりました。掲句、古い句で会社帰りに見かけた景です。こちらは珍しくて見ているのですが、向こうにとっては知らない男、邪魔でしかないのは良く分かります。夕暮れに差し掛かった暗さの中で、点けた火に照らされた男の顔が憮然として見えるのは煙のせいかも知れません、、、。(2003年春詠)