明るさに音たてて干す小豆かな

これも古い句です。帰省すると庭で母が小豆を干していた。広げたシートの上で笊にまだ収穫したばかりの小豆を入れ、手でかき混ぜては混じっている葉っぱやごみを取り除いている。山間にある実家は朝日が差すのは遅いし日暮は早い。特にこれからの季節は朝は霧に覆われることが多く、朝から日差のある日は貴重になってくる。小豆も母もそんな日差を満喫しているようだった、、、。(2001年秋詠)

故郷に海在らざりし小豆干す

笊に入れた小豆を転がすと海の音がする。小学校の学芸会の演劇で使った効果音はこれだった。昔はラジオや映画での効果音も、笊ではないが似たようなものが使われていたらしい。山の中で育ち、本物の海の音なんて聴いた記憶は無かったから、ラジオや映画であこがれつつ聴いていた海の音は、ほとんどがこれだったのではないだろうかと、今更ながらそう思う。(1999年秋詠)