郊外を走っている車の中から見た景。金縁の眼鏡がいかにも測量士らしく、日焼した顔に似合っていた。つくづくと、サラリーマンで良かったと思った、暑い夏の日であった。(1999年夏詠)
カテゴリー: 1999
後ろ手に腰の鎌抜く草刈女
プロの技です。地域の共同作業の時などに真似をしてみますが、挿した鎌が気になってしょうがない。手を切るぐらいが関の山です、、、。この辺りでも、専業で農業をされている方はほとんど在りません。(1999年夏詠)
入学の子に青空の新たなる
学校行事と言えば私の仕事だった。掲句は下の子の中学校入学式での句。校舎のある高台へは臨時駐車場のぬかるんだグランドへ車を置き、長い石段を登って行く。ふと見上げると清々しい真青な空があった。まるで子どもたちの新しい学校生活を祝福するかのようだった。こんな時代もあったんだ。(1999年春詠)
食堂に若芽売り来て磯香る
社員食堂には実演販売や物売りの類がよく来た。若布売りもその中の一つである。食堂の丸椅子に着くとすぐに用意してあったスチロール製の小さな容器が配られる。中にはポン酢を垂らした深緑色の若芽が入っている。口に運ぶと若布の香りと一緒に海の匂いがする。美味。ほんの半口ほどしかないこの味につられて、おばちゃんたちは次々と大量の生若布を買うことになる。(1999年春詠)