ずっと昔は田圃だったが、建設会社の土地になったらしく、造成されて一時は建築資材が置かれたりしていた。そのうち土が搬入されるようになり、いつの間にか小高い丘のようになってしまった。それもほったらかしで、いろいろな草が見られるようになった。草にも入れ替わりがあり、一時は月見草であったり背高泡立草だったりしたが、ここ二三年は薄が勢力を伸ばしてきた。今年は大分薄原らしくなってきた。ずいぶん広い土地なので、これが薄に覆われたら壮観だろうなあ、と楽しみにしているのは私一人だろう、、、。(2012年秋詠)
カテゴリー: 2012
いつ見ても人なき家の実むらさき
散歩の途中の普通のお家、いつも小奇麗にされているのだが、人の姿を見たことがない。カーポートに車が入っていたことは一度も無く、壁沿いの同じ位置にいつも赤い自転車が止めてある。白いカーテンのかかった部屋はいつも静かだ。それでいて、庭は手入れが行き届いており、小さな花壇には四季折々の花が咲いている。どんな方が住んでおられるのかと、いつも不思議、、、。(2012年秋詠)
鳥渡る夕日に羽音響かせて
夕暮を歩いていると突然山陰から小鳥の集団が現れ、大きな羽音を響かせて頭上を越えて行った。唖然とする間もなく、集団は夕日に向かって小さくなって行った。こういう渡もあるのだと、一人納得して見送った、、、。(2012年秋詠)
訪れる人も秋色山の駅
とある駅の風景、今日で九月も終りですね、、、。(2012年秋詠)
叔父に聞く母のロマンス秋彼岸
叔父がポロリと話してくれた父と母のロマンス。きっと二人とも仏壇の向こうで慌てているだろうが、こういう話を聞けるのも叔父一人になってしまった、、、。(2012年秋詠)
撓みつつ月にかかりし雁の棹
日常の散歩で、こんな景色に出会えることも、あるのです。ほんとに偶然、タマタマです、、、。(2012年秋詠)
コンビニへ道一本の良夜かな
今年の十五夜は十九日です。さて、月は見られるだろうか、、、。(2012年秋詠)
秋夕日ポポの実ひとつ落つる音
ポポとか、ポーポーとか、ポポーとか呼ばれている北米原産の果物で、日本へは明治の頃に持ち込まれたらしいです。モクレン科で、真っ直ぐな木に朴のような葉をしています。果実は大きなアケビのようですが、色は緑、アケビのように熟しても割れません。味はなんとも表現が難しいですが、好き嫌いのはっきり分かれる味で、私はどうも、、、。植えたのはずいぶん前ですが、生り出したのはほんの数年前です。採り頃がわからず待っていると、熟したら勝手に落ちてきます。実も大きいので、音も大きな音がします。掲句はその瞬間です、、、。(2012年秋詠)
いわし雲空一枚を画布として
鯖雲と鰯雲と鱗雲、どう違うのだろう?とネットで検索してみると、写真付きですぐに出てきます。なんと便利な世の中になったことでしょう。ということで、興味のある方は検索してみてください、、、。何度も何度も書いてしまいますが、私の育った両側を山に挟まれた故郷では、空も狭いので、空全体が鰯雲に覆われてしまうことがあります。圧倒されます。見上げていると、自分まで地球という船に乗って動いているような不思議な感覚になってきます、、、。(2012年秋詠)
溝萩や御堂に古き石香炉
道路が出来るという話で移転し、建て替えられた大師堂。建物は集会所を兼ねた今風になったが、傍にはお決まりのように溝萩の花が植えられ、今を盛に咲いている。コンクリートを打った軒下に、風化した花崗岩で出来た四角い香炉と思われる物が置かれている。前の御堂にあった物を移転したのだろう、年代物の古びた石の表面には「世話人雲州亀松」の文字が読める。以前に聞いたことがある、古くから出雲と関わりがあった土地、という話を思い出した、、、。(2012年秋)