もう少しです。ひたすら耐えましょう、、、。(2012年秋詠)
カテゴリー: 2012
機関区をはみ出す鉄路草いきれ
帰省に伯備線を利用していた頃は、岡山駅を出てしばらくは何本も線路のある広大な駅の風景が続き、駅って広いなと感じていたが、句会へ行くのにその線路沿いを歩くようになって、改めてその広さを感じている。電車の窓から眺める線路が中心にある風景と違い、たくさんの鉄道関連の建物や施設が町と複雑に入り組んでいるのが見え、興味を惹かれて飽きない。古い機関区の大きな建物では、開け放った大戸のむこうに整備されている機関車が見える。引き込み用の線路は機関車の下からその大戸を出てフェンス際まで敷かれ、夏には草に覆われている、、、。(2012年夏詠)
老犬の眠り白南風かぎりなく
去年は夏を越せないかなと思っていた老犬アリス、夏を越し、秋、冬、春を越し、再び夏を過ごしています。全くの自然体で、白南風の吹く中で、ピクリとも動かず眠っている姿を見ると、今年こそホントにダメかなと思うのですが、またしてはムックリと起き上がり、大きな声で餌を要求するのです、、、。まあ、食べているうちは大丈夫かな、、、。(2012年夏詠)
猛暑日の凄み増したる空の青
猛暑の日の空は、青を通り越して暗ささえ感じてしまう。そこにあるのは底知れぬ宇宙の力のようなもので、ちっぽけな地球を焼き尽くそうとしているかのようだ。そんな猛暑日が今年も続いている、、、。(2012年夏詠)
一手打ち一手待つ間の遠花火
ずいぶん昔、会社の先輩Nさんと四国の工場へ、オーディオ機器の開発応援に行ったことがある。会社の使われなくなった古い寮を事務の女性が住める程度まで掃除してくれ、しばらくNさんと二人で生活した。Nさんは東京への長期出張の間に将棋会館に通ったというほどの将棋好きで、とても私が勝てるような相手ではなかった。それでもNさんは、その部屋に残されていた将棋盤を見つけると、足りない駒を紙切れで作り、いやだと言う私に毎晩相手をさせた。ある晩将棋盤を囲んでいると遠くで音がして、割れて一枚だけ透明になったガラス窓の、ちょうどそのガラス一枚に収まるほどの小ささで遠くの花火が見えたことがあった。きれいだった、、、。(2012年夏詠)
萱草の花の痩せゐし墓地の隅
萱草が咲き始めました。目立つようで目立たない花という印象があります。葉っぱの薄緑も、花の朱色もおとなしいですね。それでいて、石崖の間のようなところからでもひょろひょろと花茎を伸ばして、花をつける強さがあります。我家の裏の土手に生えた萱草は、刈っても刈っても懲りずに生えてきます。掲句の萱草も散歩で側を通る、除草剤で処理したような墓地の隅に、ひょろひょろと伸びて咲いていた萱草の花です、、、。(2012年夏詠)
風少し紫陽花のゆれ傘のゆれ
あじさい寺に行くと不思議と雨に会うようになってしまった。掲句、去年の句だが、やはり雨の降る日になってしまった。前を行く人の傘が花と一緒にゆれていた、、、。(2012年夏詠)
鬱といふ読めて書けぬ字栗の花
とあるところに漢字の話題があったのでこの句を書きました。昔から読めても書けない漢字が多く、パソコンの恩恵にあずかっている一人です。俳句もパソコンからスタートしましたので、いきなりパソコンで作ることも多いのですが、掲句のような難しい漢字を使った句もなんなく出来てしまいます。場合によってはこのままパソコンから投句可能な場合もありますので、なんとも便利な世の中です、、、。句会になるとこうは行きません、、、。(2012年夏詠)
めまとひを払う手つきも疲れきし
夕刻のまだ暑さの残っている時に散歩に出ると、やたらとめまといに付きまとわれることがある。それも疲れている時にかぎって多い。さらに言うと同じ道の同じあたりで付きまとわれる。これだけ重なると、さすがにいい加減にしてくれと言いたくなってくる。最初はせっせと払っていた手も、そのうち回数が減り、動かなくなってくる。向うを見ると、同じような手つきの人がやって来る、、、。(2012年夏詠)
一木の一山のごと栗の花
自然に育った栗の木はそれ自体がこんもりとした形をしている。それが花時になり、全体が白く覆われることにより、周囲の緑の中で際立って大きく、そして山のように見えた、、、。(2012年夏詠)