風一夜さわぎて朝の石蕗の花

雨風の激しい一晩がありました。朝には雨は上がっていましたが、木々は濡れ、動きの早い雲の間から時折太陽が覗くような初冬の天候でした。散歩に出ると、昨夜の風の狼藉ぶりがそこここに見えます。桜並木はすっかり葉を落とし、濡れた落葉が舗装路に貼り付くように残っています。根元の草むらは風に押し倒されるように乱れ、その間から石蕗の黄色の花が健気に覗いていました。気をつけて見ると、どなたが植えられたのか、それぞれの桜の木の根本に黄色の花が、、、。それから一年、今年からその石蕗の花を見つける楽しみが出来ました、、、。(2012年冬詠)

炭竈の人なく上るうす煙

美咲町の本山寺へ行く途中の道端に小さな炭竈があります。生業としての炭焼きではないのでしょう、いつ見ても人の姿はありません(滅多に通りませんので無理もありませんが)。この時も人の姿は無かったのですが、煙は出ていました。色が薄かったので、炭焼きの作業としては終盤だったのでしょうね、初冬の山らしい景でした、、、。(2012年冬詠)

あの世とはこんなものかも返り花

ちょっとした気候の変化で返り花は咲きます。そう思って探すと、いつもの散歩道の桜並木でいくつも見つけられることがあります。大きな木の枝先に緑の葉っぱが二三枚、返り花はそれに隠れるようにしてひっそりと咲いています。そう思わなければ、気付かないままです。気付いた花もいつの間にか散っています。と言うより、いつの間にか消えています、、、。(2012年冬詠)

古具屋に「こばた」の看板冬ぬくし

通い始めた小学校のそばのお店、軒先にこの看板がありました。吊るした看板の両面に大きくひらがなで書かれた「こばた」の文字、入学したての一年生にはかっこうの話題でした。だって横書きの時は左から読むと習ったばかり、「こばた」と読めるが意味がわからない、、、。新しい「たばこ」の看板に変わったのはずいぶん後のことでした、、、。掲句は岡山奉還町の路地を入ったところにある古具屋で見かけた看板です、、、。(2012年冬詠)

路地に置く漬物樽と冬菫

岡山駅西口近くの裏通りの風景です。浅い軒廂の下にプランターや鉢が重なるようにして並べてあります。その一角を、これも重なるようにして、プラスチック製の漬物樽が占めています。まだ漬けて間もないのか、重石と蓋の下の隙間に見えるビニールシートが新しそうです。プランターには冬菫が、これも植えられて間が無いのか、水遣りの跡が冬の日差しに、、、。(2012年冬詠)

駅裏にぬけ道多しゐのこづち

句会への行き帰りに岡山駅の周辺を歩くようになって、駅の広さにも驚きますが、駅裏の道の多さにも驚いてしまいます。中には線路まで来て無くなる道とか、鉄道関係の会社でしょうか、いつの間にか敷地に入っていて抜けられず、知らぬ顔をして引き返したりとか、慣れるまでは大変でした。新しい道を見つけて歩くのも楽しみの一つですが、時には掲句のような、育ちすぎた牛膝にどうやってすれ違おうかと悩むような道も、、、。(2012年秋詠)

手をひろげ欅百年目のもみじ

国道53号線、御津のへんで見た欅の大樹です。欅の紅葉は黄もあり紅もあり、さまざまなようです。掲句、もともとは「黄葉」としていましたので、たぶん黄色だったのでしょう、車の中から見たひと際高い木の大きさと、形の良さだけが記憶にあって、色は曖昧です。もちろん、百年経っているのか、それ以上なのかも曖昧ですが、キリの良いところで、、、。(2012年秋詠)