鳥取県との県境、人形峠での句。トンネルが出来てからというもの、喘ぎながら曲がりくねった坂道を峠まで上ることは無くなった。では道路は荒れているだろうと思っていたが、予想とは全く違った。峠付近にはいまだに原子力関係の施設があるため、道路もよく整備されている。かつて、やっと峠かと一息ついた前面が広いガラスに覆われたドライブインも、今は他の用途で使われているらしく、荒れることなくその佇まいを残している。ただ違うのはかつての賑わいが全く無い事、人影は自分だけ、通る車も無い。道べりのコスモスが時々風にゆれていた、、、。(2016年秋詠)
カテゴリー: 2016
蛇穴に入る一枚を脱ぎ散らし
私感ですが、蛇は冬眠の前に一度脱皮するようです。この時季になると散歩の途中で見る蛇の皮が急に増えます。その数ほど本体を見ることは無いので、たぶんもう穴に入っているのだろうと思うのです、、、。(2016年秋詠)
名園の外れ名も無き草紅葉
知らないだけで、本当は名のある草なのですが、、、。(2016年秋詠)
稲滓火の一村煙に巻きにけり
この句もまた、昔と違いと書くことになるのですが、今は収穫と同時に藁は裁断され、そのままにされるか、あるいは掲句のように燃やされます。大がかりに燃やされると掲句のように、、、。(2016年秋詠)
白鳩も黒鳩もゐて落穂かな
昔と違って機械化の進んだ現代の稲作では落穂を拾うような場面を見ることはありません。だから鳥たちにとっては天国だろうと思います。雀は大集団で飛び回っていますし、街中で見るような白や黒の鳩が、、、。(2016年秋詠)
頭上にて地にて音して木の実降る
枝を離れる時から地に落ちて静止するまで、木の実はいくつかの音を繋げて落ちて来る。それを聞くのが楽しい。待っていて落ちて来るものでもないが、、、。(2016年秋詠)
一叢に岸のはなやぐ桜蓼
何でもない川岸の草むらに一叢の桜蓼、、、。(2016年秋詠)
やや寒を解きて昇る朝日かな
やっと秋らしくなったと思ったらまた暑くなったりして、季節は気まぐれですね。歩き出した頃は寒かったのに、日差が出ると急に体感温度が上がってきます。もう少しすれば、それを心待ちするようになるのですが、、、。(2016年秋詠)
柿熟るる主在らうと無からうと
我が家の柿も色づいて来ました。田舎ですから柿の木は至る所にあります。空家となったお家の庭にもあります。同じように熟れますが、採る人はなく冬を迎えます。我が家では一応すべて消費するようにしています、、、。(2016年秋詠)
鯉跳ねて秋の均衡崩れけり
空と山と川と、それぞれの秋が程よく調和して静かに時が流れている。そんな中にどっぷりと浸っていると、いきなり川面で大きな音がする。目をやった時にはすでに半ば沈みかけている鯉、同時に水輪が大きく広がって行く。瞬間に私の頭の中の秋の均衡は崩れ去っていた、、、。(2016年秋詠)