げんげ田に椅子とテーブル据ゑられて

車で走っていて見かけた風景。道路脇に広がる紫雲英田。一面の紫雲英を見渡す位置に据えられた日よけ付きのテーブルと椅子。人の姿は無かったがどうやら見かけることの少なくなった紫雲英田を一般に開放しているようだった。残念ながら急いでいたので車から降りる時間は無く、帰りにもう一度と思いながら通過した。帰りには何のことは無い、すっかり忘れて気づいたのは通り過ぎた後だった、、、。(2017年春詠)

山藤のにほひ天より降るごとし

参道を歩いているとどこからか藤の匂いがしてくる。どこから匂ってくるのだろうと周囲を見渡すと、鬱蒼と茂った参道脇の高木の、そのまた上に青空と一緒に藤の花が見える。まるで天に花が咲いているようだ。倉敷阿知神社にて、、、。(2017年春詠)

羊歯の芽ののの字を解く春の雨

雨が降ると急に植物が勢いづく。庭に吊るした釣忍の”の”の字の芽も伸びてきた。田舎に帰った時に祖父が作ったばかりの物をくれた。今から三十年以上前、子供が生まれるより前の事だった。中には祖父が自分で焼いた木炭が保水材として入っている。それだけで他に肥料をやる訳ではないが、水さえ切らさなければ今でも夏には涼しげな葉っぱを茂らせてくれる。植物の命は長い、、、。(2017年春詠)

釣舟のうつらうつらと春の湖

句会へ向かう途中のダム湖、四季を通じて釣舟の姿が見られます。釣舟は川舟の上に窓のある箱をのっけたような形、たぶん風よけなのでしょう。だから釣人の姿は見えません。うつらうつらしているように見えるのは釣舟のほう、、、。(2017年春詠)